ラジ&ピース
ラジ&ピース / 感想・レビュー
めろんラブ
この作品、ものすごい事になっています。何がって、削って削ってこれ以上削ると谷川俊太郎さんのエリアに行っちゃうよ、という限界点。文字通り”研ぎ澄まされた”小説です。ラジオというメディアの持つ温かみが救済となり伝播していく様に心が浄化される思い。クールでスタイリッシュな印象のなかに、人間讃歌が見え隠れしているところも素敵。そこはかとなく明るい未来が掴める気がして、そろりと両手を握ってみるような読み心地が幸せな小品。併録には、今の絲山さんは描か(描け)ないであろう福島がありました。屈託のない福島が。
2013/08/06
metoo
ラジオは子供の頃から好きだ。たまに、好きなパーソナリティーの顔の露出があると声のイメージとの落差に驚く。テレビの露出が少ないシンガーソングライターみたいに。でも顔なんて関係ない。声とトークと選曲に波長が合えばチャンネルを合わせる。ツンデレパーソナリティー野枝のカチンコチンに凍りついた心がゆっくり溶け出す過程が見事。リスナーは古い友達のように野枝を見守っている。そう思えた野枝はプロとして頭抜けるのだろう。ラジ&ピース。野枝に幸あれ。
2015/01/21
ゆみねこ
北関東のローカルFM局でパーソナリティをつとめる野枝は、自分の容姿に自信を持てない。他人や家族とも容易に打ち解けることの出来ない彼女が、居酒屋で知り合った女医の沢音や、リスナーの「恐妻センター前橋」との交流で少しずつ変わってゆく。野枝の声をラジオで聞いてみたくなりました。
2015/08/12
ito
主人公・野枝の斜め上から目線な態度に妙に共感する。コンプレックスゆえに人間関係をめんどくさいと思ってしまう野枝は孤独と音楽と自分を愛している。野枝の冷めた性格を群馬の地方都市の穏やかであたたかな空気と人々が解きほぐしてくれる。自分を認めて、少しずつ現実に歩み寄る野枝の姿にホッとした。孤独で不器用に生きる女性の閉塞感を感じながらも、少しずつ扉が開くゆるやかな時間があった。
2014/06/13
なゆ
話の温度はとても低い感じなのに、どこかハッとさせられてしまう絲山さんの世界に最近ハマっている。縁もゆかりもない群馬でラジオパーソナリティーをやることになった女性の話。愛想もなければ人との関わりも極力避けるほどの人が、そんな仕事をこなせるのがはじめは意外でもあったけれど。こんなにハリネズミみたいに生きててどうなるのか…と思ってたところでの、あのハッと息をのむ瞬間。キラキラが目に浮かぶようで好きだなぁ。大きな変化はないけど、やわらかな変化を見つけるごとに心地よい。ラジオを聴いているような文章も楽しかった。
2014/07/12
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