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水死 (100周年書き下ろし)

水死 (100周年書き下ろし)

水死 (100周年書き下ろし)

作家
大江健三郎
出版社
講談社
発売日
2009-12-15
ISBN
9784062154604
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水死 (100周年書き下ろし) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

2009年の長編だが、随所にこの作品が自分にとって最後の小説になるかもしれないとの覚悟のようなものが語られる。内容的には大江作品に繰り返し問い返される、彼の幼少期にまつわる偽自伝と、それと同時進行する劇団人ウナイコ等との邂逅の物語である。ただ、今回の作品はいつもよりもフィクションとしての膨らみが大きく、したがって小説の語り手も、「私」でありながら、長江古義人になっている。物語の展開はおおよそいつも通りではあるが、終幕はかなり意外な急展開を見せる。続編の存在を思わせるのだ。あるいは、それは大江の願望なのか。

2014/05/06

ω

真っ赤な皮風のカバー📕 大江健三郎(作品中では長江古義人)の集大成となる水死小説‼️は、書かれることはない。老いた大江先生が投げやりになったり踏ん張ろうとしたり、心理描写が妙にリアルなようで掴み所がない。非常に難解、何が言いたいのか、私には全然分かっていないだろう…。

2022/05/14

Yui.M

蓮實先生の評論(『群像』掲載)は小説内の「窮境」を巡るものだった。『水死』は私が初めて読み通せた大江作品(長編小説)であったが、父の死の真相に強くひきつけられ、祖母・母・妻・姉・ウナイコなど女たちとの関係も面白く夢中になって読んだ。レイトワークという言葉にギクリとなり、大江作品を読んでこなかった今までを後悔した。蓮實先生の「水死論」の締めが素晴らしい。以下抜粋「作品の中で大江は『水死小説』を見事に完成させている。その大江がどの大江か知らない読者の決定的な無知こそ文学だけがもたらす真の「窮境」かもしれない」

2022/07/15

しゅん

「擬-私小説」という内容がふさわしい、強烈に事実に基づきながら、明らかに虚構であるという二面性。責務を果たせない人間としての自画像を(作家の妹や作品を上演する劇団員の女性、そして亡くなった母を通して)浮かび上がらせつつ、その責務が不条理なようでもある。嘔吐と国家をめぐるエピソードに後半突如「強姦」と「妊娠」という主題が刺さり、逆らえ得ない洪水のような展開が押し寄せる。幼少期の父の「水死」が、別のイメージになってかえってくる。守るためのテロ行為、その後の水死を待つ。「私」は最後も、蚊帳の外の眠りにいる。

2023/03/30

マリカ

大江健三郎氏の私小説的小説です。大江氏の作品からはずいぶん遠ざかっていたのですが、タイトルに衝撃を受けて、手にとってみました。タイトルから、さぞかし重々しい小説なんだろうと予想しつつ、ページをめくると、意外にも平易な文章で、ストーリー展開もこぎみよく、よどみが少ない。その一方で、複数のテーマが積層していて、物語に厚みもあります。大江氏が「遺作」に取り組んでおられるのかもしれない、と感じて、この偉大なる老作家の晩年の作品となるかもしれない大作を同時代に読むことができたことに感動しました。

2012/01/11

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