戦国奇譚 首
戦国奇譚 首 / 感想・レビュー
yoshida
後北条家に使える下級武士を主人公に「首」にまつわる短編6編からなる短編集。伊東潤さんの作品でも初期のものか、物語にもう少し深みがあっても良かったかなと思う。武士が立身する為には戦で軍功をあげるのが近道。軍功の証が「首」である。そのため、「首」には譲渡が禁じられている。また、戦場で「首」を拾い己れの軍功とするのも、禁じられている。簡単に軍功はあがらない訳で下級武士の悲哀が描かれる。安定して読める短編集なのですが、他の伊東潤さんの作品と比較するとやや物足りないことは否めず。色々と書きましたが楽しめた作品です。
2017/08/12
ナイスネイチャ
図書館本。短編集で歴史小説としては軽く読めました。もらい首、拾い首、間違い首など本当に当時いっぱいあったんだろうなぁ。
2014/09/08
キムチ
同じ武家モノでも、天下泰平の治世では伺えぬ話ばかり。生ぬるい時代モノは好みでない私には喰い応えのある短編集であった。北関東、北条筋の話がそろっている為か、その一帯独特の土色の世界、決して表舞台には出てこなかった地侍の悲喜劇。南篠さんの武家モノにも嗅いだ匂いがする。現代では全く消えた中世の所業の一つ・・首領を挙げる、それに「頼まれ」「間違い」「拾い」「貰い」と接頭語が付いているとは仰天。と共にうそ寒く広がる世界。この作家、地味を装いつつ実力を感じた。
2014/09/14
藤枝梅安
戦国初期。小田原北条家の傘下にある地方豪族の、さらにその下で戦に明け暮れる武士たちの「首」への執念を描く短編集。「頼まれ首」「間違い首」「要らぬ首」「雑兵首」「もらい首」「拾い首」というスイスイ読める6つの作品。敵方の名のある武将の首を取れば褒章と出世とが手に入る。戦乱のどさくさに紛れて、自力ではなく偶然あるいは探して首を手に入れた男たちの動転と葛藤。「首実検」に臨む緊張と、その後の顛末を滑稽に描いている。岩井三四二さんの作品に通ずるものがある。
2012/11/25
Our Homeisland
この作者のものは三冊目でした。実力のある面白い作品を書く人だと思いますが、あまり多くの人に読まれていないようで残念です。この短編集も、なかなか面白かったです。「惨」には及ばなかったと思いますが。北条氏などの関東の、戦国時代を題材にしている点も、珍しさもあってよいと思います。 短い中で、何とも渋い味わいで、今は大人気になりすぎてしまったような、池井戸作品の半沢シリーズにも共通するような、落差の大きさを描いている「雑兵首」はかなり良かったです。暗さと明るさと救いのなさのブレンドのバランスも見事だと思います。
2013/10/29
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