蝶の夢: 乱神館記 (島田荘司選アジア本格リーグ 4)
蝶の夢: 乱神館記 (島田荘司選アジア本格リーグ 4) / 感想・レビュー
るすみら
中国の作家、水天一色氏の作品を翻訳した一冊。舞台は唐代、天宝年間。長安の片隅に、乱神館と呼ばれる死者との邂逅を叶えてくれる場所があった。乱神館館主、離春の元に富豪の封家から幼い依頼者が訪れる。五日前に溺死した母に会わせて欲しいというのだ…。陰陽の術に長けていると思われている離春が、その手の妖術とは距離を置き「普通」に事件を推理し解き明かす様が意外で面白かった。翻訳のせいか原文がそうなのか大仰な物言いが多く、それも時代物の雰囲気を出している気がした。著者による後書きで唐代を舞台にした理由が書いて有り、爆笑。
2010/02/01
名無しのオプ
途中までは晦渋な訳文も手伝って退屈さが優っていたものの、解決編に至ってそういうことだったのか!と膝を打つ。個人的な感触としてはクイーンよりはクリスティのような。女性らしい心理をたいせつに扱ったミステリだなあ、と。訳がくどいのか原文がくどいのか判別つきかねるところがあるので、原文も余力があれば当たってみたいなあ……(原書購入済み)。
2014/08/12
やっす
中国発の本格ミステリは初読。解説によれば、中国は今本格ミステリの発展途上にあり、作家数・作品数ともに日本に比べてまだまだなのだとか。今作は、展開は地味ですが、何気ない会話や証言の中に伏線が散りばめられ、 解決でそれらの伏線が一つの構図に収束する様はなかなかに見事で、本格ミステリとして十分に楽しめました。解説では、御手洗熊猫なる作家の『異想天開之瞬移魔法』、『二十角館的無頭屍』など、非常に気になる作家や作品が挙げられていて、今後の中国発本格ミステリの発展と、翻訳出版が更に進むことを願わずにいられません。
2013/11/12
nashi
主人公離春は霊能者を名乗り、肩書きをしたたかに利用しながら、実は論理で謎を解いていく。辛辣ながら思いやりにあふれた魅力的な探偵だ。意外な真相が楽しめる本格でありながら、人物の愛憎劇もしみじみとして読書欲が満たされる。原文は唐代という時代設定を存分に生かし、古雅な中国語を駆使しているはず。邦訳では十分に味わえないのが心残りだ。それほど舞台構築は見事で、吸い込まれる。
2012/08/06
あんく
唐の時代を舞台にした、中国のミステリー。謎めいた女主人公の離春の魅力と、彼女が謎解きにあたる中で見せる、人びととのかけあい、やりとりがおもしろい。そこから導き出される結末も、二転、三転して楽しませてくれる。
2011/02/11
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