獣の奏者 外伝 刹那
獣の奏者 外伝 刹那 / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
【3編収録中 刹那 のみの感想】 歳若くして『獣の奏者』と出逢える方は幸せだ。人を恋うる気持ちを知り、恋人を得て、初めての子を授かる時。その子の産声を耳にする時。そして人の親となり、自分の二親を想う時。イアルの一人称『おれ』の男性目線で有りながら、それを上回る女性視点。男であれ、女性であれ、年齢を重ねるごとに深みを増してゆく。【刹那】の反対語は未来永劫の【劫】 タイトルに反して【劫】に読み継がれて行く物語・上橋菜穂子さんの【凄味】に出逢えた私は幸せ者だ。
2010/10/25
エンブレムT
読了後、しばらくの間ボンヤリしてしまうほど余韻が残る外伝でした。ずっと知りたかった本編で語られなかった空白の11年間を埋める物語。イアル視点で語られる『刹那』は、硬質で切なく、深く心の襞に分け入った描かれ方でした。エサルの物語『秘め事』も、彼女の思いがけないほどの情熱を秘めた人生を垣間見せてくれ、深い物語になっていました。エリンの人生に、イアルがエサルがジョウンが、そしてジェシがいて本当に良かった。そう思いました。あとがきにも大納得。数年経って再読したら、この物語はさらに深みを増して感じられる気がします。
2010/10/12
有
終わってしまったんだ。外伝を読んでいて時折そんな寂しさが浮かぶのは、彼、彼女等が親い存在に思えてならないから。この十年があってよかった、その幸せの一欠片がここに。自分の地位を投げ売ってでも、一緒に居たいと思える人と、その時その時を大切に生きる。生きるものの本能、尊さをまた教えてくれた。そしてエサル師。奔放な姿はエリンそっくり。恋は煩わしいし、苦しいし惨めだ。ジョウンの言うように、辛いときほど時はゆっくりとしか流れていかない。でも気が付いたら、優しい目で山を撫でていたりするんだろうな。生きるものは強いから。
2013/02/03
がらは℃
本編では語られなかった、エリン、イアル、エサルの物語。本編の隙間を埋め、さらに奥行きや温かさを与えている。彼らの物語は、この刹那があったこそなんだなあ。なんともいえない切なさ、いや刹那さだなあ。
2011/03/21
れいぽ
物語にはもっとも美しい臨界点がある。書きたいエピソードがあってもよけいな一滴を加えれば物語の形はあっけなく崩れてしまう。。。「獣の奏者」の空白の部分は外伝で語るのこそふさわしいという上橋さんのこだわり。この外伝を読んで本編の輪郭がクッキリしました。エリンの話、エサル師の話、どちらも体温が通っていて「ああ、エリンらしい。エサル師らしい。」と感慨深いです。生命(いのち)が愛おしく思える読後感でした。
2010/10/21
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