そのころ、白旗アパートでは
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そのころ、白旗アパートでは / 感想・レビュー
ミカママ
ふむふむ、オンボロアパートに共存するうだつの上がらぬ男子たちの物語ね、とわかったつもりで読み始めたけど。2編目の「東京モノレール」にはヤラれた。個人的にかなり思い入れのあるモノレールってことはさて置いて。さすが伊藤さん、言葉の選び方がハンパない。ラスト、藤井寺くんは...というオチでお願いします、伊藤さん。
2016/10/30
hit4papa
老朽化甚だしい木造アパートを舞台に、モラトリアムなビンボー青年三人の日常を描く連作短編集です。ビンボーだって恋をする、ビンボーだってやるときゃやる。赤貧、極貧という語感に伴う悲惨さとは無縁のゆるゆるな仲間との愉快なビンボーライフ。ほっこりする話、せつない話、身につまされる話と盛り沢山です。大爆笑とはいきませんが、ほんのり口角が上がってしまうシーンがちょいちょいあります。最終話、”卒業”を迎えた三人とのお別れに、名残惜しさを感じてしまいました。伊藤たかみさんには、こういう作品をもっと書いて欲しいですね。
2016/11/05
nyanco
80年代の青春ドラマによく登場していた木造でボロボロのアパート。そんなアパートが今もまだあって、そこに住む3人は…。80年代ドラマでは金はないけど夢と希望をもっていた主人公達だが、平成版は夢も希望もなく白旗をあげた人生の降参者のような3人。書けない作家・加藤さん、二浪二留のフトシ、実家には医学部を目指すと言って上京したものの予備校にも通っていない藤井寺君。懐かし世代なので舞台設定は結構好き。藤井寺くんが継母と乗る東京モノレールの話や、フトシの切ない恋の話も定番だが、やっぱり青春ものには欠かせない。続→
2010/08/29
あつひめ
一生懸命生きようとしてはいるのだけどなかなかチャンスに恵まれないアパートの住人達。屋根のてっぺんに白旗を掲げているから心も降参気分?仲良しの住人でも心に抱えるものを全てはさらけ出さない。だけど、今の時代のようにそっけない関わりでもないところがどこか懐かしさ感じさせる。隣りの声も筒抜けのようなボロアパート。だから運命共同体モドキのような気持ちも芽生えてくるのかもしれない。いつか一人で生きていかなきゃいけないときが来るとは思っていてもやはり淋しさと不安は付き物。それよりも希望の方が勝ってくれるといいのだけど。
2011/03/03
キキハル
あまり期待せずに読んだが予想外に良い本だった。一皮剥けた作者のふっきれた文章が小気味よい。取り壊しが決まっているボロアパート。屋上には降参するかのように白旗が翻っている。そこに居つくのは、広い東京のどこか隙間に自らの居場所を探す者たち。売れない小説家。医大を受験し続ける26歳の浪人生。バイトばかりの大学7回生。彼らは極貧生活にもいじけることなく、たくましくおおらかだ。アパートが最後の砦になっていたのだろう。ここで休んだら前に進めよと。人生に白旗を上げるのはまだ先でいいのだと。よっしゃ!と叫びたくなる本だ。
2010/09/09
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