エルニーニョ (100周年書き下ろし)
エルニーニョ (100周年書き下ろし) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
21歳になるやならずの瑛と7歳の男の子ニノのコンビネーションが絶妙の味わい。出会い方の設定も上手い。行くあてもない2人の逃避行は、哀愁を伴いながらも明るさをもまた失うことがない。2人が出会う人たちも石松砂糖販売の婆ちゃんをはじめ、暖かさの度合いの適度さがいい。そして、終わりの見えないのが、あるいは辛い結末が待っていそうな予感を抱えながら読むのがいい。読んでいて、心が痛むような、またその反対に情動を激しく動かしながら。とにかく心に響く小説である。これはニノの物語であり、これしかない瑛の魂の成長の物語。
2022/03/14
ゆみねこ
DV男から逃れて、見知らぬ南の町にやってきた瑛(てる)。そこで出会ったフィリピン人との混血の男の子ニノ。ニノは灰色の男から、てるはニシムラから逃げる。二人の行く末が気になって、一気に読めました。こういう結末なら納得、とてもいい本でした。
2015/07/29
taiko
DV男から逃げてきた瑛が、ひなびた商店街のある街で灰色の男から逃げているハーフの少年ニノと出会う。 追われるふたりが、逃げ続けた末に出した結論とは。 メインのストーリーのテーマは重く、深刻なもの。 瑛の問題は、本人の強い意志で解決を見たけれど、ニノの問題は、まだまだ続く様子。 ただ、解決に向けてすすんでいる感じの結末には、明るい未来が見え、ホッとした。 途中途中に挟まれる寓話、 必要なものだとは思うものの、少し読みにくさを感じた。 著者の意図をうまく汲み取れていないのかなと、少し落ち込んでしまう。
2017/11/10
kishikan
女子大生「瑛」と国籍を持っていない7歳の男の子「ニノ」の逃避行の物語。でも日本(九州)への旅なのに、そんな感じがしない。砂糖屋がある子守商店街なんかは、東京の下町っていう感じ。南国の海なのに、東北の夏の海のようにも思える。たどり着いたホテルは、どこか外国風。瑛とニノで「テルニーニョ」。追われて、逃げて・・・、鬼ごっこ、かくれんぼ。追い詰められ離れ離れになって、でも二人は相手を見つけ出す。別れ、出逢い。でもきっと思いがあれば、いつか「君」を探し出すことができる。そして君を想ってくれる人がどこかにいる。
2011/04/04
nyanco
DVの話だけだと暗く重くなってしまうが、そこにファンタジーを絡めるという手法が中島さんらしい。ファンタジーの部分と現実の境がぼんやりとし、不意に現実に引き戻される時にも、その違和感を感じさせない。そして敢えて、いくつもの小さなストーリーを散りばめた…という構成が面白い。スーザンの森のくまさんの話は特に素晴らしい。時代に取り残されたかの様な子守商店街、そして瑛とニノの思いつきで商店街が活性化していく話が楽しい。実際にこんな商店街活性化計画やツアーが出てくるかも…w 続→
2011/01/10
感想・レビューをもっと見る