戦国鎌倉悲譚剋
戦国鎌倉悲譚剋 / 感想・レビュー
キムチ
KENZANに連載したものを刊行とあるだけにかなり男性向け(良くも悪くも)だから好みだが、余りの堅さで中盤まではコツコツ読み。戦国期の関東雄、北条氏綱成の孫、氏舜に光が当たる。全く初めての人物だけに、こう云った智将が埋もれている事を知れた感慨があった。描写は実に映像的・・逐一述べたいほどにリアル感溢れる。中世人間像によく描かれる「現実と仏門との揺らぎ」がテーマになっており、その人間味は現代にでも通じそうな生々しさあり。剋・・厳しい、惨いの意だが、装丁もその情感がよく出ている。やはりこの作家、もっと追いたい
2014/12/04
makka
小田原北条家の先兵たる玉縄城主、北条氏舜が主人公。武人として修羅の道を突き進むか、憧れる仏門に入るか、2つの道を周りに振り回され、ゆらめき続け、宿命に打ち克つためもがく。そしてラストには悲譚が待ち受ける。
2013/10/23
maito/まいと
歴史小説の中でも、非常に異色の1冊。後北条家サラブレッドとしての責務・決められた歯車としての自分と、そこから抜け出したい自分。両者の中でネガポジを繰り返していく氏舜の姿は、まさに現代社会における人間のあり方に重なる。また、強い意志を貫いたように見えながらも、実は脆さとの背中合わせでせめぎ合いを繰り返したのであろう青蓮尼との、ひたむきに向き合おうとする二人の生き様がまぶしく見えた。物語は残酷な展開へとつながっていくが、大事なのは己の本心に沿う生き方であることを、本書は教えてくれている、そんな気がした。
2011/09/20
ほぺむ
地黄八幡の孫、玉縄の宿命。武士としての道。「橋」を越える。立場がそこから見える世界を創る。場所によって見えにくくなった時もあるけれども、二人の絆は出会った時からずっと変わらず在ったように思う。人生の中で様々に燃える瞬間が続き、もっとゆっくり読みたかったが止められなかった。委細が不明な二人故の描き方なのかも知れないが、時代の波に翻弄される北条家という背景と相まって、人間の一生という物凄い大河を感じた。今の自分に響いた。鷹は飛ぶ、絆は残る、勇は進む。
2015/09/29
クランチ
自分の生き方を貫くか、武人として家名に泥を塗らないようにするか、今に生きる現代人には想像もつかない葛藤だと思う。いつの間にやら機構(システム)に組み込まれて、身動きが取れなくなるのは現代と一緒だけど。だけど最後に自分の生きるべき道、やるべきことを必死になってやり遂げた人間というものは、いつだって幸福なのだと思う。
2011/06/07
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