すべて真夜中の恋人たち
すべて真夜中の恋人たち / 感想・レビュー
ヴェネツィア
言葉も文体も、まるで別人のようだ。ここには、例えば『乳と卵』のような強烈な個性はないのだが、川上未映子さんは、それを捨てて本格的な恋愛小説が書けることを証明して見せた。34歳になった冬子の初恋が描かれる。それは生涯にたった1回限りの恋だ。不安も、煩悶も、そして華やぎもが実に丁寧な筆致で描き出されて行く。初めての本格的なデートの日。美容院で「あなた綺麗な髪してるわねえ」、「化粧栄えするわね」と言われた時、冬子はどんなに心が弾んだことだろう。また、生涯で初めての心のぶつかり合いも経験した。静かな結末も見事。
2015/04/10
風眠
登場人物に血が通っていないように感じたのは、多分、皆何かが欠けていて、自分の悲しみを認識しないまま、うっすらと纏っているからなのではないか。冬子と三束さんの会話はじれったくて、初めて好きな人と会話を交わす中学生のようだけれど、いい大人になってしまったからこその迷いも感じられる。「自分の誕生日に真夜中一緒に歩いてくれませんか」と、冬子は三束さんに伝えるが、その願いは叶えられることはなかった。嘘という小さな罪を抱えながら、冬子、三束さん、聖の人生は動き出す。読後、再び冒頭のページを読む。そこに答えがあった。
2012/02/06
hiro
読み始めは、未映子さんの読みにくいけど、詩のようないつもの文体ではなかったので、大変読みやすい文体に、逆に少し違和感を感じた。三束が登場してからは、‘みていると、いらいらする’30台半ばの不器用な主人公冬子と58歳の三束との恋愛が、どのように進むかが気にかかり、一気に読んでしまった。若い二人のラブコメ小説とはまったく違う大人の切ない恋愛小説には、このようなラストがいいのかもしれない。最初に、冬子が昼食にスパゲティをつくるシーンは、未映子さんの昼食の9割がスパゲティなのを知っていたので思わす笑ってしまった。
2012/06/03
遥かなる想い
本の校閲を職業とする入江冬子 34歳の物語である。 人との付き合いが 苦手な冬子の内面描写が 秀逸である。 58歳の三束さんへの密かな想いが 行間に溢れ、不器用な 冬子にイラつかされるのだが… 誕生日の日の真夜中に恋人と歩きたい …冬子の想いは 届くのだろうか? 最後は 苦く 哀しい 光の物語だった。
2018/11/09
takaC
文章は心地よかった。タイトルやデザインも良かった。でも自分はこのモチーフは好かない。
2017/03/18
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