それでも三月は、また
それでも三月は、また / 感想・レビュー
ヴェネツィア
大震災の翌年の刊行。17人の作家たちがそれぞれのスタンス、文体で3・11を語った文集。ドキュメンタリー・タッチのものもあれば、純然たる小説もあり。刊行後5年を経た今となれば、その後にたくさんの優れた検証や証言が出版されたため、むしろ仮構された小説の方が印象に残るか。多和田葉子「不死の島」、川上弘美「神様2011」あたりが一頭地を抜くか。もっとも、多和田の小説は独特のシニシズムと韜晦のために誤解を招きかねないが。一方の川上の小説は、いつもながらの飄々ととぼけた味わいの裏に日常の断絶を潜ませたもの。
2017/12/24
あつひめ
東日本大震災をあの日で終わらせない…作家や詩人たちの声。7月12日は、奥尻の震災の日でもあった。あれから20年。見える景色は復興していっても心の中はまだまだ。笑顔は浮かんでも、その笑顔も幸せも震災前には比べられない。東日本大震災もきっと同じなのかも。欠けたところは埋められなくとも欠けた部分を丸くすることはできるかもしれない。原発事故は日本だけの問題ではない。そして私たち世代だけのことでもない。真剣に取り組まないと。
2013/07/13
なゆ
やっぱり三月になると改めて考えたくなる。17人が書いた、いろんなアプローチの「あの日」やその後や生と死。既読のものもけっこうあったけど、三月に読み返すとまたちょっとズシッとくるような。多和田さんのは、やっぱ強烈ですね。川上弘美さんの『神様2011』はやはり欠かせませんね。あの日の前と後をあんなに鮮やかに比べてみせてくれて、何とも言えない気分になる。そしていしししんじさんの『ルル』、養護施設の傷ついた子どもたちを救う犬のルルの話が、何度読んでも切なすぎて。ルル…。また、三月が来たらこの本読むかもしれない。
2018/03/07
めろんラブ
東日本大震災からさほど時を経ずに執筆されたアンソロジー。著者それぞれの「あの日」との向き合い方が物語として昇華されています。絶望や混乱や緊迫感が堆積し疲弊の中でも(或いは、だからこそ)作品を生み出す力に、限りない尊敬と畏れを抱きました。3.11が近づくと、毎年にわかに踊る「あの日を忘れない」の文言。普段忘れて過ごせる人に対するそれではなく、忘れ方が分からない人にこそ届く言葉や物語が本書にはあるように感じます。中でも、川上弘美さんの「神様」「神様2011」に心惹かれました。
2017/03/21
財布にジャック
沢山の作家さんの短編が詰まったアンソロジーでした。題名どおり、作家さんなりのアプローチであの三月を題材にされていました。特に、重松さんといしいさんの作品は、じわじわと私の心の中に入り込んできました。でも、どの作品も、形は違えど作家さんたちの気持ちのこもった作品なのだと思い、普段よりもペースをおとして、一字一字大切に読ませていただきました。
2012/04/30
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