最果てアーケード
最果てアーケード / 感想・レビュー
ヴェネツィア
10の物語からなる連作短篇集。静かで密やかな物語世界が全編にわたって拡がっていく。町の最果てにあるアーケードと、そこにあるどこか不思議なお店、そしてその店主たち。最果ての向こうにはどんな世界が続いているのだろう。死の気配が漂い、黄泉の国に繋がっていそうにも見える。そして、それはどこかブローティガンの『西瓜糖の日々』を思わせる世界だ。冒頭の「衣装係さん」に始まり、巻末の「フォークダンス発表会」で閉じられる円環は見事だ。それはまさに小川洋子の世界だが、ここに収められた作品群は、幾分密度が薄いようにも思われる。
2014/10/30
Miyoshi Hirotaka
死と生は隣り合っている。最初の出会いが最後になったり、ちょっとした気まぐれが自分だけを死から遠ざけたり、自分勝手な理由が愛する人の貴重な残り時間を浪費させたりもする。また、死者の思い出はあらゆるところに様々な形で残っている。義眼、遺髪、母が編んだ三つ編み、娘が途中まで読み進めた百科事典など。人は愛する人を失って生と死が一体であることを知る。そうして初めて愛する人の思い出を自分の体の中に取り込もうと個性的な儀式を行う。そんな人が訪れる商店街が最果てアーケード。生者と死者が愛という絆で結ばれた時に両方が輝く。
2016/03/04
風眠
「最果て」とは、何の果てなのだろう。この世の果てなのか、時間の果てなのか、それとももう、この世には無い果てなのだろうか。想い出を閉じ込めたような品物を売る、小さな商店街。古いレース、義眼、ドーナツ、古い消印の絵葉書、ドアノブ、勲章。ささやかで取るに足らない、けれど誰かの想い出を呼び覚ますような愛おしい品々。そんな最果ての商店街に存在する「私」の目を、意識を、時間を通して、行きつ戻りつ、追憶という果てに向かって物語は収束していく。静謐で美しい記憶の欠片、「死」のこちら側に残された者たちへ語られる連作短篇集。
2014/01/25
ハイランド
客の姿も見えず、どう商売しているかわからない店が、子供の頃はけっこうあちこちにあったが、経済原則には逆らえず、田舎町の商店街は多くがシャッター通りになってしまった。ここはそんな寂れた、郷愁と哀愁と、死の匂いが漂う静かなアーケードの物語。レース屋、勲章屋、義眼屋、ドアノブ屋などあまり聞かない店が建ち並ぶ。この国籍不明、時代不明の物語はとても心に響いた。コミックの原作として書かれたらしいが、コミックの表紙には、元気そうな少女が走っている絵が書かれて、イメージが……。別物として読んでみたくもあり、みたくも無し。
2014/11/12
たー
世間から忘れ去られたかのような「最果て」商店街で展開される静かな物語。小川洋子の真骨頂って感じ。
2013/09/14
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