愛の夢とか
愛の夢とか / 感想・レビュー
hiro
川上さんの小説4冊目。7編の短編集。最初は?だったが、『日曜日はどこへ』から良くなり、『お花畑自身』、『十三月怪談』と終わりに行くほど良かった。最後はさすが芥川賞作家という感じがした。『お花畑自身』:今までの川上さんの作風にないこのような小説の結末をどのように処理するのかと、想像しながら読むのは楽しかった。『十三月怪談』:時子の一人称の部分では、徐々に漢字が少なくなり、最後はひらがなだけになってしまう。時子の死後、潤一と関係を漢字とひらがなでも表しているようで、それが伝わってくる斬新な表現方法が良かった。
2013/07/23
風眠
ありふれた日常、誰もがもっている感情、そういうものの中にある不安や寂しさ、愛着とか執着とかをデフォルメすることで、物語は成り立つのだと思う。日常の中にひょいっと顔を出す白昼夢、それらは夢なのだから現実では叶えられないし、思い通りにはならない。夢のような現実のような、そういう頼りない日常だから、人はときどき極端になってしまうのかもしれない。静謐で匂い立つような、淡々とした文章の中に見え隠れする修羅場が寂しい短篇集。『十三月怪談』は、大島弓子の『四月怪談』へのオマージュなのだろうか。この短篇集の中で一番好き。
2013/12/28
あつひめ
「愛の夢」の曲がこの本のどの場面にも似合いそうな・・・そんな印象を受けながら読んだのは私だけかな。人生の中で幸せだった日々が、またこうであってほしかったという思いが走馬灯のように駆け巡る時・・・静かに小さな音で流れている。私はピアノは弾けないけれど、この曲のような生き方がしたくなる。もしかしたら解釈が違うかもしれないけれど(笑)お花畑自身がとても印象的だった。自分の作り上げた庭で自分も土になる。自分の求めていた大事なものに自分自身がなっていく。腐葉土に包まれた時に、またこの曲が私の中では巡っていた。
2013/11/21
❁かな❁
川上未映子さんちゃんと読んだのは初めてです!今、他の川上さんの本は読んでいる途中で。7編の短編集です。川上未映子さんの文章はとても綺麗で静かにすーっと入ってくるような感じです。全体的に死、命、愛を感じる作品でした。一番気に入ったのは「十三月怪談」です。自分が死んだ後の旦那さんの幸せを思う気持ちや旦那さんの奥さんへの思いに泣けました。最後も良かったです。独特の「、」が多い文章も話し言葉のように流れるように入ってきてとても良かったです。段々ひらがなが増えていくところも上手いなぁと思いました。素敵な作品でした☆
2013/06/17
なゆ
『ヘヴン』でちょっと苦手かな~と思ってた川上未映子の短編集。こちらはすごく好きな感じ。失いかけたもの、失ってしまったもの、喪失感といったかけらが散りばめてあるような。「三月の毛糸」「お花畑自身」「十三月怪談」が心をざわめかせて印象的。中でも「十三月怪談」の、死別した夫婦の、それまでとその後の話がなんともいえず切なく複雑に絡み合って、なんだか落ち着かない気分になったところでのあのラスト!!あの、〝まるでどこでもないような、しかしそれはいまとしか言いようのない時間〟の幸福感にノックアウトです。
2013/04/26
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