カラマーゾフの妹
カラマーゾフの妹 / 感想・レビュー
ntahima
こんな悪夢にうなされたことがある。「君の仕事はこの家を持ち上げることだ!」「家を?」同僚達の反応は「大変だねえ~」。未完の大作『カラマーゾフの兄弟』の後篇を書くとは生身の人間に家を持ち上げろと言うに等しい。著者が真っ向から挑まずミステリにて応えたのは賢明な選択。但、著者が“家を持ち上げえたか?”と言うとそうではない。書かれなかった続編を実在の作品が凌駕するのは神の領域。『~兄弟』続篇構想を読んだことがある人なら犯人は簡単に分る筈。それと文学史上最も印象深い脇役のひとりであるイワンに主役は似合わないのでは?
2013/03/27
財布にジャック
江戸川乱歩賞受賞作です。審査員の選評が後ろに載っていますが、確かに賛否両論になってしまうのも、読んでみれば頷けます。カラマーゾフの兄弟を読んでいるとより楽しめるとは思いますが、親切なことにおおまかなあらすじはこの小説の中で紹介されていました。まさかあのドストエフスキーの有名すぎるお話の続編を書こうとする日本人作家が現れようとは、天国のドストエフスキーもさぞや驚かれていることと思います。カラマーゾフ事件の異解釈、題名のカラマーゾフの妹とは?そして、登場人物達のその後と、いろいろな意味でお腹いっぱいです。
2012/11/17
mukimi
カラマーゾフの兄弟を読み終えてすぐ本書に取り掛かった。カラマーゾフ事件の真相が現代の日本作家により独自の視点で暴かれる痛快さ。あれほどの歴史的大作の中にまだこんなにも解釈の余地が残されていたとは…と驚きはあるが、あの作品はミロのヴィーナスの様に読む者の想像力を掻き立てる未完成の部分があるために色褪せないのかもしれない。ドストエフスキーが生きていれば書かれた筈の続編をこれまでどれほどの人達が想像しただろう。本書だけでなく世界中の作家がその続編を描く挑戦をしてきたのかもしれないと思うとぞくぞくする。
2022/08/11
みっちゃん
作者が「前任者」と呼ぶかの文豪の手になる原典は恥ずかしながら、全くの未読です。当然彼が「13年後」の続編を書くと予告し叶わなかった事も知りません。でも「カラマーゾフ事件」を詳述する章もある親切さで、私にも大変面白く読めました。プロファイリング、科学捜査、多重人格、サイコパス!コンピュータとロケットまで飛び出す、破天荒とも思える展開ですが、これらの点が最後には見事に1つの線に繋るのです!すごい解決編!いつの日か、原典に戻り「前任者」の残した手掛りを確認出来たらいいな。
2013/07/06
ケイ
期待して読み始めたが…、なぜこれを受賞作としたのか。あくまでも反対に票を投じた今野さんに全面的に同意する。「我が前任者」とドストエフスキーを呼んで欲しくない。ミステリーとしては、『カラマーゾフの兄弟』の矛盾をついて仕上げた話であり、そのアイデアの斬新さは素晴らしいと思う。しかし、カラマーゾフを真面目に読めば、彼らのその後の性格設定は無理があると思う。作者があの長編をかなり読み込んでいるとこはわかるが、ここまでくればパロディではないだろうか。アイデアとミステリとしてのみが評価されたのだろう。
2014/06/13
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