金の仔牛
金の仔牛 / 感想・レビュー
南雲吾朗
追剥をしていた若者が株と言うシステムを行使し金を儲ける。話の大筋はそういう事だが、そこは佐藤氏の書く小説である、話の進行が非常に小気味良よくまた、登場人物も凄く粋でカッコいい。男女間の気持ち、親子の問題、地位・名誉・プライド、それら全てにお金が絡んでくると人間模様はより醜悪になってくる。人間の欲望とは凄まじいものだ。とにかく頭が良くなければ悪者にも成れない。否、頭が良いからこそ悪者に成れるのだろう。物語中ほどのアルノーとニコルが別々に株の売り買いをしてお金を稼ぐ個所では、凄く愛情を感じた。凄く面白い小説。
2019/03/30
kochi
1719年。ルイ14世が莫大な負債を残し崩御して数年、パリは紙幣と株券が作り出す狂騒の中に。追い剥ぎを生業とするアルノーは、襲った相手、カトルメールの誘いに乗り株の世界に飛び込む。恋人のニコルに横恋慕した狂貴族オーヴィリエとの株の勝負を受けたアルノーは、ニコルの父(故買屋)や街の金貸し、顔役等の複雑に絡んだ思惑に翻弄される。18世紀フランスのミシシッピ•バブルと世相を見事に描いた佐藤亜紀の本書を読む時、「アベノミクスに踊らされている日本」に重ねるのは私だけ?
2013/01/11
マウリツィウス
佐藤亜紀の金の仔牛とは偶像シンボルの明示でもその意味と価値とは異なる。何故ならその連続体の描写する怪奇シンボルとは金融性の断絶、すなわちテクスト読解における不可能を呈している。政治社会風刺を痛烈に含めた意図とは経済計算を剥奪したギリシャ文明論への明瞭批判だが、その合理化社会論において無力とされるのは偶像金融とは即ち古典偏在文明史を射抜く論拠にして強行暴挙、アトランダムに継承された旧約聖書史は古代ユダヤ教連環に属し西洋文明を反転させていく彼女の常套手段だ。伝説とは仮言説に過ぎず終焉とは初めを意味した異教。
2013/05/22
紅はこべ
経済小説として今までに読んだ最高傑作。
2013/12/07
俊介
面白かった。18世紀フランスの金融バブルの物語。単にバブルの話というより、登場人物たちが株価の上昇を見込んで交わす様々な「取引」が本作の見どころ。現代の「金融派生商品」を戯画化したものだとも言えるだろう。なので物語としてはやや複雑だが、細かいことなんかどうでも良くなるくらい軽やかな展開が楽しい。登場人物たちもみんな魅力的。主人公カップルのやんちゃぶりも好き。
2021/10/21
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