晴れたり曇ったり
晴れたり曇ったり / 感想・レビュー
ヴェネツィア
(こういう言い方は顰蹙をかうだろうなと、重々承知しつつ)川上弘美さんは、ほんとうに「可愛い女」である。本書の随所にそれが顕著なのだが、例えば―わたしはかわうそにならって自分の年の数だけ豆を並べて(中略)きっちり並べ終えると、端から食べてゆき、最後の一粒を食べる時には、心の中で「明日から春だね、かわうそ」と唱えます―この感性に私たち(私だけではないはず)は思わず魅き寄せられるのだ。そして、「死という人生に一度しかこない一大事」という捉え方の厳粛で真摯な姿にも。小説もいいのだが、エッセイはまたしみじみといい。
2016/11/05
AKIKO-WILL
川上さんのエッセイ大好きです!いつも日記とはまた違った感じでプライベートがよく分かりました。離婚していたり、昔は理科の先生だったとしりかなりビックリしました。大学で生物を専攻していたりと知れば知るほど不思議で興味深く読みました。
2014/12/31
miyu
岸本さんがご自分のぶっ飛んだエッセイの中で「カワカミ、カワカミ」言ってたので気になって手に取る。シンプルなセンテンスで、まるで奇をてらうところのない、素直で気持ちのよいエッセイ。そしてとても私好みの文章を書く人。小説はともかくエッセイはもっと早く読んでおけばよかった。お母様のご実家が湯島ということで、私も慣れ親しんだ下町の様子が少しだけ出てくる。下町の時の流れはゆるりとしているから、世代が多少違っても同じ話でガハガハ笑えるのだ。お店なんか、今でもまんま「どストライク」ですもんね。なんか懐かしさ満載でした。
2014/11/24
めしいらず
巻頭に収められた、僅か2頁ずつに12か月のあれこれを綴った「匂いの記憶」の、些事から掬い上げられた感覚の玄妙さ。のっけから心奪われる。このエッセイ集では、著者のスタンス、家族とのこと、震災や原発に関する考えなどが、これまでになく明快に示されており、よりカワカミさんを身近に感じられた。書評内で触れられた、アウシュビッツの強制労働者の、死と隣り合わせの日々の中、ある日の夕陽に「世界ってどうしてこう綺麗なんだろう」と言う呟きから、「人間本来のもつもっとも美しく素朴なもの」を汲み取る著者。その眼差しも、美しい。
2013/09/19
metoo
川上弘美の「神様2011」を読み、著者に興味を抱き手にした本書。川上弘美の日々の徒然。ふむふむニヤニヤと読み進め、アレクサンドル・デュマ「モンテ・クレスト伯」の頁で読む手が止まった。川上さん、この本がお気に入りで何度でも読み返している。歳月を経ても改めて心酔できる喜びが綴られ、作家もまた一読者なのだと改めて感じ入る。そして、「いつもそばに本が2」で紹介されている『小説って、なんだろう』と問いかける「ニッポンの小説 百年の孤独」(高橋源一郎)がとても気になった。
2017/01/02
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