自分を好きになる方法
自分を好きになる方法 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルは自己啓発本のようだが、実態は小説。主人公リンダの16歳、28歳、34歳、47歳、3歳、63歳をたどる連作短篇の集積⇒長編化といった構想。いずれもに共通するのはコミュニケーションの齟齬。リンダの思いが相手にはストレートには伝わらないのだ。高校の同級生にも、恋人や夫、あるいは近所の仲間たちにも。では、それがイラダチを生むのかといえば、そういうこともなく淡々と時間が過ぎてゆき、リンダはいつしか63歳に。人生とは所詮はこんなものと達観したかのような小説。その煩悶のなさが新しいか。
2022/06/30
風眠
16歳、28歳、34歳、47歳、3歳、63歳。リンデという女性の一日を切り取った連作であるが、通読するとリンデの60年以上にわたる人生のクロニクルである。63歳の前だけ時間が戻り、3歳のリンデが差し挟まれている。小さい時の癇の強さと63歳の気短さは、もともとの気質として繋がっているのだなと納得させられる。これは上手い構成だと思う。「いつのまに、こんなに遠くまで来たんだろう。ほんとうに分かりあえる誰かと、出会いたかっただけなのに」帯のこの台詞は作中には出てこない。けれどリンデの心を表すのなら、これしかない!
2014/03/05
パフちゃん@かのん変更
高校図書館で借りました。自己啓発本かと思ったら、「いつか自分が心から一緒にいたいと思える相手」に出会えることを夢見て生きる女性の16,28,34,47,3,63歳のある1日を綴った6編の連作長編小説だった。なかなか人と分かり合えないリンデのもどかしさは共感できるものの、リンデは全く好きになれない。そしてこの題名は?自分を好きになる方法なんて全然書いてなかったじゃないかと思うけれど、リンデはその生き方を全く変えようとしていないし、反省もしていない。それって、人が何と思おうと自分が好きという事なんでしょうね。
2014/06/04
YM
本谷本16冊目、やっと最新作まで追いついた。1人の女性の一生の中のある1日を6つ切り取って、短編でつないでる。今までのもっちんとはちょっと違うアプローチだけど、これも好きだなあ。主人公の年代によって、微妙に個性に変化が出てくる。10代20代30代あたりは、相手のこと考えられなくて言い訳多くて。僕も一緒にいたらイラってすると思う。歳をとっても結局そんなに変わんないんだけど、ちょっとだけ成長する。人との関わり方が大きい。僕もそう思ってる。自分が変わる、変われる瞬間て出会いと、あと感動なんじゃないかな。
2014/12/15
Mumiu
いやあ、しんどい!今まで読んだ人物の中でトップクラスの超めんどい女性。同性だけに目が厳しくなっちゃうのかな?!同族嫌悪?!自分のイヤなとこまでくっきり見えちゃうとこがこれまたしんどい。なかなか生きづらそう(彼女に自覚はあまりなさそうだけど)。28歳のリンデの恋人と、34歳で結婚記念日をいっしょに迎えた夫は同一人物でよかったんだろうか?彼もなかなか勇気ある選択をしたんだなあ。あたりまえだけど、過去と他人は変えられない。自分に対してちょっとでも「まあ、よくやってるよね?!」と思い、寛容になれるといいもんだね♪
2013/10/02
感想・レビューをもっと見る