晩年様式集 イン・レイト・スタイル
晩年様式集 イン・レイト・スタイル / 感想・レビュー
優希
3.11を内包しながら、その思いの中で私小説として自らの作家人生を振り返ることで改めて大江文学の描いてきた文学というものを見つめ直せた気がします。著作の登場人物と共に、自分も作品の登場人物とすることで、今までの作家人生の集大成にしているのが何とも言えない余韻のある世界を作り出していると感じました。何気ない雑文ではあるのですが、今まで描こうとしてきたものが全て詰まっていることでおそらく書くべきことは書いたという感じなのでしょう。最後の小説として上梓し、文筆家として筆を置くにふさわしい名作を残していった。
2014/06/09
メタボン
☆☆☆☆☆遡ること二十数年、私の日常は文学現代音楽に支配されており、その日々で常に寄り添い続けたのは大江健三郎の文体であった。今でも「新しい人よ眼ざめよ」でイーヨーが語る太字のセリフを懐かしく思う。「懐かしい年への手紙」を最後に、いとしくも難解な大江の世界そしてブンガクゲンダイオンガクから遠ざかってきた。人生の折り返し地点を過ぎた今、大江との再会(大江を再開)を果たし、光=イーヨー=アカリ、長江古義人などの変遷は私に空白の長さ重さを想起させる。しかしその文体は通奏低音としてやはり私の底に流れていたはず。
2014/01/25
壱萬参仟縁
自分らみなについても、国じゅうの原発が地震で爆発すれば、この都市、この国の未来の扉は閉ざされる。自分らみなの知識は死物となって、国民というか市民というか、誰もの頭が真暗になる、滅びてゆく(79頁)。脱原発を訴える作家として高く評価される大江先生。原発に囲まれた地震国に生きている以上、カタストロフィーと無縁だとは思えません(130頁)。
2014/07/01
百太
大江健三郎、初読み。・・・・こっ困った・・・。挫折感。やたらと後期高齢者だからが出てくるわ、状況解らずでイラっとする。今まで大江作品を読んでいなかったら辛いのね(苦笑)。“震災・小説”で検索したら出てきたので読んでみたけど。。。反省と後悔。トホホッ。
2019/03/01
かふ
3.11のカタストロフィからどう生きればいいかを模索した作品か。大江健三郎のそれまでの小説が死者たちとの対話で成り立っていたのだが、生者である女三人からの批評を受けて改編を余儀なくされる。それは障害のある息子が自殺をほのめかす発言をしたことから、女たちアサ(妹)と千樫(妻)と真木(娘)から古義人(作中の私)は批評される。それは『ドン・キホーテ』のサンチョ・パンサのような役割。大江健三郎は世界文学として詩に多く親しんできたのだが、それは彼岸(西洋だとダンテ『神曲』とか)の世界であり、
2023/09/13
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