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舞台 / 感想・レビュー
風眠
「パンまずい」、主人公の葉太が旅先のニューヨークでつぶやいたセリフ。私もニューヨークを旅したとき、同じことを思った。トイレの描写もその通りだなと思ったし、身の安全のため「現地人です」という服装と態度で街を歩いたことを思い出した。でもね、観光初日で盗難に遭ったというのに、体面ばかり気にする葉太の自意識過剰さには、呆れるというか何というか。物語の最後のほうで、自分のダメさを認めた葉太だけれど、でも多分、変われないんだろうなと思う。現実の自分を受け入れることは痛みを伴うこと。でもそれを乗り越えないと、生き辛い。
2014/03/22
傘介
葉太、笑えるわ。と思って読んでいたけど、段々笑えなくなってくる。あいたたっ。でも憎めない。中2病の葉太を大人になりきれてない「少年」と捉えよう、ぬるい目で見守ろうと思っても、でも、もう29歳。きっと西さんはこういった未完成な男性像の自意識そのものを、疎まれると解ってても愛情こめて描き切りたかったんだろうな。でも同じニューヨーク舞台の青少年物なら、ちゃらんぽらんな高校生の自意識が少しずつ未知の世界によって開かれていく『世界のはてのレゲエ・バー』(野中ともそ)のほうがまだよかったような。
2014/06/28
kishikan
半年ばかり、平積みの中で熟成させていた本を取り出す。西さんはこれで3冊目になるけど、これまでの西さんの作品とは随分異なる感じがする。僕は、村上春樹さんの小説を読んでいるような気分になったんだけど、どうでしょう。現代に生きていることへの苦悶をその「現代」の象徴都市であるニューヨークという街を舞台に、関心があるけど無関心、音楽や美や繁栄と衰退、勝者と敗者が混在する社会に弱い人間を飛び込ませて、俯瞰するというメタファー。PCを横に置き、ニューヨークのストリートビューを見ながら読みふけってしまいました。
2014/09/09
えむ
“圧倒的な面白さで読ませる”という紹介文とは違い、葉太の深層を描く純文学的作品と感じる。はしゃいだ人間にはバチが当たる。だから、幼いころから葉太は演じている。葉太の父も母も演じている。そこは舞台である。ただ葉太は演じても周りには誰もいない。タイトルは作中の小紋扇子(→common sense=常識)の新作小説名だが、その作者を好きだという葉太を皮肉っている様にも思える。2014-107
2014/11/23
テンちゃん
『人生は舞台の上で演じる貴方のドラマ!』(﹡ˆ﹀ˆ﹡)『誰かの役をいつまで演じていても心は闇!本当の貴方の役がある!そこに本当の人生の光った舞台がまっている!』⇨葉太!(¯―¯٥) 亡き有名作家の父を未だに乗越えられない!⇨幼い頃の心に『自意識過剰』という傷を父親にすりこまれた葉太!『作られた自分!』⇨『父に認められず、強迫観念に囚われる!』⇨ニューヨークで全てを奪われ、初めて自分自身と向き合う!(⊙.⊙)『本当の自分!』⇨ニューヨークが葉太を再生の舞台へと導く!傑作作品。☆(﹡ˆ﹀ˆ﹡)4.7
2015/12/27
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