パノララ
パノララ / 感想・レビュー
hiro
芥川賞受賞作『春の庭』に続いて読んだ。『パノララ』はパノラマと言えない子どもの言葉。主人公田中真紀子はデジカメでパノラマ写真を撮るのが趣味。すぐに全裸になる父、女優で突然家を出て行く母、それぞれ不思議な能力を持つ父の違う兄弟3人という真紀子が間借りする木村家、また両親との間がうまくいかない真紀子の家と、真紀子のまわりで起こるパノラマ写真のように少し現実からは歪みやズレのある約1年間を描いた作品。デジャブやワープが出てくるがエンタメ系ではなく、やはり『春の庭』との共通点を感じる柴崎ワールドの作品だと思った。
2015/07/26
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
いつかどこかでみた風景にふと出会う感覚をデジャヴュと呼ぶけど、その風景に入り込んでしまった28歳の〈わたし=田中真紀子〉。友人のイチローに誘われ、彼の家に間借りすることになった彼女は、個性的な家族に囲まれ新生活を開始する。増築が趣味で全裸で過ごすイチロー父にあてがわれたヒョウ柄の部屋。個性派女優の母みすずは恋多き女で、三人の子どもたちは全て父親が違う。母親にスポイルされ生きにくさを感じながら育った彼女は、そんな家族の中に自分の居場所を見出していくが……。日常と地続きにある迷宮を堪能する〈奇妙な味〉の物語。
2015/08/08
なゆ
増築を繰り返してヘンテコ複雑な木村家に間借りすることから始まった、田中真紀子のちょっぴり奇妙な生活。パノララはパノラマ、いかにも柴崎さんらしい。前からインタビュー記事などで、パノラマ写真の微妙な歪みやズレの面白さを語られていたが、まさにそれを小説に変換したかのようなそんな世界。木村家はみんな家の造り以上に複雑な感じだし、真紀子と両親もいびつだし。家族関係にも踏み込みつつ、映像作家のワークショップのなんか不気味な空気や、真紀子が迷い込んでしまったあの時空など、今までとは違った厚みが感じられて大満足の一冊に。
2015/03/25
アマニョッキ
冒頭の一文でもうこの作品が好きだと思った。その思いはラストの一行まで全く変わらなかった。親との確執をもった主人公が、ひょんなことからちょっと変わった木村一家で間借りをするお話。増築されつづける家、異父兄妹、映画、ループとワープ、つぎはぎだらけの日常でも、いつかパノラマ写真は360°フル回転シームレスの世界を写し出すかもしれない。ところどころでがむしゃらに泣けた。柴崎さんの描く世界が好きだというひとがわたしはきっと好きだ。
2018/05/15
ともくん
初めて読む作家。 印象としては、西加奈子に似ている。 なんでもない日常が、実はとても大切なんだと思わせてくれる作品。
2020/08/25
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