血の弔旗
血の弔旗 / 感想・レビュー
ナミのママ
戦後の昭和とはこういう時代だったのだなと思いながら読了しました。科学捜査や監視カメラなどない時代、足で歩き執拗に追う刑事。時代の流れと、成功と、手にしたモノが増えるにつれ、変わっていく登場人物たち。この時代をまったく知らない人はどう読むのでしょうか。ストーリーだけを追えば14年の出来事なのですが、その背景にある時代の流れの早さは、まさに「昭和史」です。2015年『このミス』9位、わかる気がします。今の時代、今の年齢の人が書いた昭和史として、記憶に残る一冊になりました。
2016/01/03
とくけんちょ
軽い気持ちで読み始めたが、内容の濃い大作でした。重大事件を起こし、それにより大金を手に入れた主人公らの人生を描く。一見、悪者によるサクセスストーリーに見えるが、そうは問屋が卸さない。執拗に迫る警察や事件関係者。じわじわと真綿で首を絞めるように主人公を追い詰める。物語の進行とともに、その当時のニュースや流行歌が挿入されるのが、時代の雰囲気を出す。秀作。
2020/11/11
そうたそ
★★★★☆ 藤田さんは初読みだが、こんなに面白いとは。過去の作品を遡って読まねば。1966年に起こった11億円強奪及びそれに伴う殺人事件。事件を起こした四人の男を移り変わる昭和の時代と風俗とともに活写する長編。昭和を知らない人間ながら、昭和という時代に魅力を感じてしまう描写の数々に結構な分厚さながら飽きを感じることなく読めた。ハードボイルドは苦手だし、話自体も作品を通して派手な動きは少ないのだが、それでも一気読みさせられるというのは作者の筆力そのものだろう。昭和という時代設定が作品によく合っている。
2016/01/04
starbro
藤田宜永は夫婦共々(妻は小池真理子)良く読んでいる作家です。600P弱一気読みしました。懐かしい昭和のヒット曲が散りばめられた大河ノワール小説です。今は殺人罪で時効はなくなりましたが、完全犯罪になればなるほど、時効って大きく影を落としていたんでしょうね?しかし11億円(現在価値であれば55億円程度)もの大金だと、もっと死にもの狂いで口を割らせるような気がしますが・・・
2015/09/23
のぶ
この作品の舞台は1960年代後半から80年代前半。作中に出てくる当時の風俗事件、流行歌等が自分のクロニクルとシンクロした。特に思い出深いのは60年代後半。当時自分は小学生。ノイズだらけの白黒テレビで見たレコ大や紅白歌合戦。そんなのがあの時代、宝物だった。家族の団らんもあった。若い人が読んだら???かもしれないけど、そんな時代があったんです。小説の内容を書いていませんが、しっかり書かれた文学作品です。ただ個人的に内容より自身のノスタルジーが上回った。なのでこの思いが本作の感想です。
2015/09/26
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