殉教者
殉教者 / 感想・レビュー
優希
江戸時代の禁教の中、聖地エルサレムへ行った日本人がいるというのに驚かされます。ペトロ岐部は巡礼することにより、自己の信仰と向き合ったのではないでしょうか。そこに関連したイエスのことなどを絡めている。それは旅路の中でキリスト教のあり方を改めて示唆していることのように思えます。帰国することが殉教につながるとわかっていながらも、その苦難の道を選んだことこそ信仰の証のような気がしてなりません。
2017/08/12
藤枝梅安
ペトロ岐部は、遠藤周作さんの小説で何度か取り上げられていたことを記憶しているが、「初めてエルサレムに巡礼した日本人」というくらいしか知らなかった。この本は、残された文書の内容に作者の想像を加え、それぞれの土地にまつわる聖書の記述を織り込みつつ、岐部の旅路と作者自身の旅路を重ねている。小説というよりは岐部に対する作者の鎮魂歌であろう。「私はあえて主の死に近い苦しみの死をのぞむ。おお苦しみの死こそ、主の願われた多くの人々の幸いを守る、」(p.103)これがため岐部はあえて死地を求めて日本への苦難の旅を選んだ。
2016/09/25
それいゆ
加賀乙彦作品「高山右近」は、四苦八苦しながら読了しました。「雲の都」は難解すぎて途中でギブアップしたままです。不安いっぱいな気持ちで読み始めましたが、この作品は私のレベルに合っています。壮大な殉教への旅は読み応え十分で、同行しているかのような気分でした。エルサレムとローマでの滞在描写が宗教色満載で、難しかったですか、ペトロ岐部が列福されているのに納得しました。まもなく、高山右近の列福式が行われる予定ですが、ペトロ岐部を知ることで福者は本当にすごいんだということが分かりました。
2016/06/06
NAO
江戸時代、激しさを増すキリスト教迫害の中、日本を抜け出し、砂漠を歩いてエルサレム巡礼を行った日本人がいた。彼が、九州各地の殉教者たちの名を殉教者名簿に記してもらうべく詳細な調査を行い、一人の殉教者の指を聖遺物としてローマの墓地に埋葬してもらおうとローマ行きを決意するようになったのは、それだけ迫害が強かったから。だが、彼の目的が最終的には殉教することだというのは、どうにもやりきれない気がする。加賀乙彦というと精神科医を主人公とした話が多く、宗教的な話は初読。でも、やっぱり、『フランドルの冬』の方が好き。
2016/08/25
かおりんご
小説。ずっとぺトロ岐部カスイのことが気になっていたのですが、やっと読むことができました。日本人で初めてエルサレムへ行き、その後ローマに行って叙階するなんて、もう本当に信じられないくらいパワフルなお人です。自力でなんとかやっちゃうところがすごい。日本に帰ってきてからの宣教活動が、ほんのちょっぴりだったのが物足りなくもありますが、こんな司祭がいたことを知れてよかったです。
2017/11/20
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