蜃気楼の犬
蜃気楼の犬 / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
"現場の番場"の異名を持つ捜一の熟練刑事と、正義感に満ち溢れたルーキー。二人の「刑事としての正義」に対するスタンスの隔たりを描きながら、綺麗事や正論だけで渡れない、刑事としての現実を切り取った連作短編集。人間の裏表、被害者と加害者の境界線、善と悪、そんな曖昧なものを常に目の当たりにし、偏った正義であることを自認しながらも、刑事であり続ける番場の人間臭さが好印象。彼の幼妻についてはもう少し掘り下げてほしかったが、登場人物に様々な繋がりを持たせる構成や、本格寄りの真相解明、ルーキーの成長など総じて面白かった。
2016/10/05
starbro
呉勝浩、3作目です。連作短編集、少し現実離れした設定もありますが、主人公の番場刑事が良い味を出しています。5編の中では、いずれも書下ろしの「かくれんぼ」、「蜃気楼の犬」がオススメです。エイジハーフ(自分の年の半分の妻を娶る事)は幸せなのかなぁ?
2016/07/12
スパシーバ@日日是決戦
C (2016年) 「変な現場だ..」「おかしな事件だ..」。ベテラン刑事と捜査一課のルーキーのコンビが事件解決に挑むが、犯罪や犯罪者に対する温度差は一体何なのか? 出産を控えた二回り下の嫁の存在が彼の人生観変えた! 各中短編の評価は以下の通り。「◎ かくれんぼ」「〇 月に吠える兎/真夜中の放物線/沈黙の終着駅」「△ 蜃気楼の犬」。刑事とは家庭を省みず、あるいは犠牲にしてまでも犯人を挙げるのが最優先、と勝手に思い込んでいたいただけ(バカミスは除外)に、一線を画した意外な着眼点に不意を突かれ少々戸惑った。
2016/08/31
モルク
県警捜査一課の「現場の番場」と呼ばれるベテラン刑事番場と新米刑事で少年と呼ばれる船越が捜査する事件の連作短編。最終5話目の表題作、無差別殺人に思われたライフル銃による4人の殺傷事件で、前の4つの事件が1つに重なり繋がってくる。番場はふたまわり下の身重の妻がおり、彼女を気遣うというよりも溺愛し好きなようにさせている方が気になって仕方がない。続編を出してその事に言及するのか。捜査する事件はどれも面白いが、とにかく番場の妻が好きではないが気になる存在であるのは確か。
2023/12/24
ダミアン4号
“現場の馬場”と称されるベテラン刑事とコンビを組んだ新人刑事(船越)の活躍を描いた物語。惨たらしい犯罪の背景を鋭い観察眼と心理分析で事件解決に導いていく馬場…彼には2周りも歳の離れた身重の愛妻がいて…それぞれのエピソードに登場した事件関係者…表題となった最終話“蜃気楼の犬”事件で無関係なはずの彼らが“ある事件”に関わっていた事が明らかとなり…こういう展開は読み手を飽きさせない!連作短編小説の醍醐味です!(笑)「正義」…法の番人である刑事でも正義を見失ってしまう事があるのか?それが人というものなのだろうか…
2016/09/18
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