凜
凜 / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
まさかまさかの大作でした。R18文学賞作家さんがこんなにも重厚なドラマを綴るとは、見事にヤラれてしまいました。舞台は北海道はオホーツクの網走、時代は大正を中心に娼妓「八重子」とタコ部屋労働者「麟太郎」の壮絶な半生を描きます。遊郭とタコ労働の描写がとにかく圧巻で、まさしく食い入るようにひたすら頁を捲りました。北の大地にて逞しく生きていく人々の姿は声にもならないキモチでいっぱいです。貧しさに打ち勝つために、なんとか生き残っていこうとする当時の人々の姿には涙しかありません。北の大地の'寒さ'が身にしみてきます。
2020/01/18
いつでも母さん
ん~ん、惜しいなぁ。今を生きる沙矢の件はいらないと思った。時は大正、北の果て網走の妓楼に生きる八重子と、タコ部屋に生きる男たちの壮絶な『生』それだけで十分だ。一気には読めない。気力が必要だ。だが、読後感は悪くない。なんだろう・・生きる息吹、生き抜く逞しさ、厳しく強いー人の持つ業なのかー諦めたと思った時から違う人生が拓くのかもしれない。久々にちょっと圧倒された作品だった。
2017/06/14
巨峰
大正時代の北海道の女郎の働く遊郭と労働者の働くタコ部屋。人間の尊厳を奪うかのような仕事につく若い男女を通して、その時代と現代を繋ぐ、まるで桜木紫乃さんが書きそうなテーマを選んだ蛭田さんの新境地ともなる作品。だからといって、蛭田さんらしい赤裸々な性描写も健在であるためか桜木さんの作品よりも生に近い感じを受けた。生々しい。北海道出身の女性作家であることをいかした作品だと思う。
2018/11/16
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
85/100点 アンソロジーでは読んだことはあるのですが、一冊の作品として読むのは初めての作家さん。重苦しいテーマの作品ですが、面白くて一気に読んでしまいました。大正時代の北海道を舞台に、壮絶な環境で生き抜く男女を描いた物語。最初はひ弱だった八重子と麟太郎が、遊郭やタコ部屋という悲惨な場所で、徐々に逞しさを増しながら生き抜いていく姿に惹き込まれてしまいました。ただ麟太郎が、なぜ毒島の元に残ったのか、なぜ棒頭になりたいと思ったのか、それを決断するに至った心情が述べられていない点に、少し不満を感じました。
2017/10/17
miww
ほとんど騙し討ちで連れてこられ小屋に監禁され過酷な環境で働かされ使い捨てられたタコ部屋の労働者、貧しい家の借金で遊郭に売られ娼妓として生きる女たちの日々‥。大正3年青函連絡船で出会った麟太郎と八重子が過酷な環境で生き抜いた網走での壮絶な世界が容赦なく描かれる。遠く離れた時代と世界は想像を遥かに超え圧倒された。遊郭とタコ部屋の性と暴力の描写に何度も眉をひそめたが、読み終えてだからこそ自分がその世界を体感できたのだと感じた。このような多くの人生があった事を日本の歴史として改めて心に刻む。
2020/02/26
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