Ank: a mirroring ape
Ank: a mirroring ape / 感想・レビュー
W-G
読ませる文章ではあるので、読書中は楽しめるが、読み終わってふと我に返るとなんか薄味だったような。科学的な記述に多くを割いた割には暴動の原因に説得力を持たせきれていなく、見せ方のせいもあるが、読者サイドとしては驚きや怖さが全然ない。こういうパニック物でゾクゾク感が全くないというのは大きな減点になる。結末に関しても、主人公やアンクの背景が平凡すぎて、罪と罰的なカタルシスに結びつかない。パルクールもなんか急に出てきた感が強く、完全に物語の都合。作者の科学知識を作品に消化させる為の試行錯誤の一作というところ。
2017/10/06
starbro
佐藤究、江戸川乱歩賞受賞作『QJKJQ』に続いて2作目です。最小、タイトルは何かの暗号かと思いましたが、全く異なりました。プロローグから快調に飛ばして読めたのですが、最期が少し弱い気がします。『2001年宇宙への旅』のオマージュ小説かも知れません。
2017/09/11
nobby
乱歩賞な前作と全く違うSFを存分に楽しんだ!序盤から語られる「京都暴動(キョート・ライオット)」とは何なのか!?テロ攻撃でも扇動でもなく「これは感染爆発(パンデミック)ではない」、一方で流れ出す噂は「AZ(オールモスト・ゾンビ)」…数頁毎に視点や場面変えての細かい構成や類人猿の多様な進化の記述にも惹かれ一気に読める。ただ前半から読者には、その殺戮の原因が示されているので少し中盤間延びを感じたのが残念…それでも終盤の収束に向けてのエンタメ模様や、明かされる遺伝子交えた大ネタがきちんと繋がっているのはお見事!
2019/02/13
モルク
研究施設からのチンパンジーの逃亡、そこから世界に誇る観光都市京都で暴動が勃発する。人々は自らの身体をボロボロにしながら殺しあう。施設長望の少年時代鏡の部屋でのエリートの父から受けた暴力、アメリカ人ライターケイティの胸のあるスペイン語のタトゥーなど伏線がどう繋がるのか。時系列の違う話が小間切れで進むので分かりにくい部分もあるが、ゲノム解説は分かりやすい。鏡や水に写る姿は自分か他者かなどの鏡の認識や人類と類人猿の分岐など非常に興味深かった。「ジェノサイド」好きはきっとはまると思う。
2018/06/22
MICK KICHI
類人猿と「ヒト」を繋ぐ鍵をめぐるサイエンスミステリー。キーワードは「鏡」と「暴力衝動」。謎をめぐる展開にかなり引き込まれ、頻繁に出てくるヴァイオレンス模写も設定に納得できるため苦にならなかった。ワンアイデアとしてここまで読ませる迫力があったと思う。しかし、主人公を含めた人間側の描写が物足りない。特に女性記者のタトゥーにまつわる記述、秀逸なわりに展開がみられなく残念。再読には向かないと思う。
2019/04/04
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