転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿
転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿 / 感想・レビュー
NAO
大学紛争が沈静化されつつあった頃、それでもまだ過激な革命思想に燃える若者たちがいた。彼らの中で繰り広げられた陰謀と裏切り、長い間闇に葬られていた影の部分が明らかになったとき、40年以上経ってまた、新たな事件が起こる。激しい抗争を繰り広げた者たちも、長い年月の間には、その思想も生活態度も変わっていった。だが、その頃のままの情熱を持ち続けたまま戦い続けている者も、ごく稀にはいる。それは、いいことなのだろうか。ドストエフスキー、三島由紀夫、大江健三郎の作品なども絡ませて、なかなか重厚な話になっている。
2018/03/11
ぐうぐう
実に14年ぶりとなる『私立探偵飛鳥井の事件簿』の新作。現代日本を見つめ、その病理を描くことを目的とするシリーズの新作は、当然ながら現在の日本を舞台としている。2015年の安保法案反対のデモから始まる物語が、引きこもりやリストラ、新興宗教といった現代的なエピソードを盛り込みつつ、やがて思想闘争の歴史を俯瞰し、テロリズムという現代社会が抱える最大の課題へと読者を誘導していく。ここには、小説家や評論家よりも、思想家である笠井潔の顔が全面的に感じられる。(つづく)
2017/11/29
α0350α
久しぶりの新刊、この難しい話とミステリが上手く絡んでいる構成がたまらないですね。一番驚いたのは作中の時間経過で飛鳥井も随分歳をとっていたことですが、人探しと過去の密室事件の謎解きも面白かったです。
2018/01/27
コリディ
6点。この作家さん、何か読んだ気がするが、記憶にない。書評に、本格ミステリ+ハードボイルド+社会問題とあるが、どれもが中途半端で、独りよがりの小説に感じました。決して面白くない訳ではないのですが・・・
2018/07/01
まんだよつお
日本の歴史で初めて学生や労働者が積極的に政治に関わり、何かを変えようとした時代があった。そうした高揚期を体験していないし、学ぼうともしない今の若者にとっては、この小説はつまらないだろうな。だって、本編の半分近くを費やして描かれているのは、60~70代前半の「政治の季節」の実態と政治的背景なのだから。登場するのは、そうした過去を背負った高齢者ばかり。彼らが求めるのは、過去を精算し、総括し、人が変わること、変わらないことの意味を問うこと。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」と荒井由実の「卒業写真」がBGM。
2018/03/05
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