新しい小説のために
新しい小説のために / 感想・レビュー
harass
ロブ=グリエの『新しい小説』の意味合いやその後の「新しい小説」、小林秀雄らの語る日本の『私小説』と新しい人称の手法などの文芸評論。演劇や映画、絵画との手法との考察があり、なかなか刺激的。なんども言及される柄谷行人の評論は未読でやっぱり読まなあかんのかと。柴崎友香や山下澄人などの手法などの紹介がある。我ながらダラダラと目を通すだけに近い読書でひどく反省。最近の日本小説でこういうことをやっているのだなと、参考になった。
2018/04/18
しゅん
「新しい小説などいらない」と書いた金井美恵子の小説論が刊行から20年経って「今、最も新しい小説論!」と帯で喧伝されてしまう薄ら寒さ。それに逆らって、映画・絵画・演劇と比較を重ねながら「新しい小説」を探る第一章。渡部直己の移人称論に呼応する形で、新古の小説論・言語論を参照としながら小説における「私」の形を輪郭づけんとする第二章。その道程は小説の枠を踏み越え、今・この世界で存在を続行する新しい「私」自体へと焦点が絞られていく。こうした踏み外し自体が批評という事故の一つの在り方。巻末の「批評の初心」が圧巻。
2017/12/09
ひばりん
冗長な印象を持った。「新しい小説のため」でないような批評は存在しないので、タイトルからして冗長である。批評というよりは批評の批評であって”論論”である。なので、これに感想を書こうにも”論論論”になってしまう。。この本に出てくる話を事前に知ってる読者であれば「それをそう繋ぐのね」というDJ的面白さを感じ取れるかもしれないが、これから文学を学ぶ大学生などにはとても勧められない。ジェラール・ジュネットを読んだ方が良い(し、ジュネット以降新しい批評が産まれていないらしいことだけは本書のおかげでよく分かった)。
2021/12/14
カイロス時間
リアリズムの話から始まったのが、次第に人称の問題に移っていき、後半は私小説を大々的に論じる。演劇や映画も援用されて盛り沢山に感じたけど、問題意識は一貫してたので◎。私小説という概念のアップデートを図り、そこに新しい小説を見出していく。完全に方法論だと思って読んでいたら、世界との対峙の問題であると切り返されたのがビリっときた。人称が存在の様態になっている状態をどう実感できるか、が鍵な気がする。セザンヌが世界との新しい関係を見つけたとか、私とは複数の他者でそこは砂漠なんだとか、いろいろと興味深い洞察もナイス。
2020/07/12
袖崎いたる
リアリズムとの格闘する自分としては含蓄のある一冊だった。リアリズムは常に私において焦点化されているので、そこで取り組むことになるのは私小説ということになる。では著者がパラフィクションなどと打ち出してまで執着する作者および読者という場ではどのように私が私しているのか。これからの小説はそれをどのように歓待すればいいのか。ーーそういうお話。
2018/04/13
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