明恵 夢を生きる (講談社+アルファ文庫 F 1-5)
明恵 夢を生きる (講談社+アルファ文庫 F 1-5) / 感想・レビュー
夜間飛行
ユングのいう自我の統合へ向けた夢の補償作用を明恵も体得していたらしい。ユングの夢も凄まじいが、明恵の夢もそれに劣らず人生の課題と格闘しているようだった。明恵の人生を法然・親鸞・一遍ら新仏教の開祖と比較しながら辿っていくのが面白い。特に同年生まれの親鸞とは、思想的には真逆なのに「女性」という課題に直面していく所が共通している。こうした歴史的な捉え方は、明恵の人生において母性・アニマという二軸が交差していることの発見によって普遍化され、自分の生き方を見直す上でもたいへん参考になった。華厳経への興味も膨らんだ。
2021/03/07
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
鎌倉時代に生き、膨大な数の自らみた夢を書き留めた『夢記』の著者明恵上人。ユング派の心理学者河合隼雄先生が、その夢を分析した一冊。明恵の信仰した仏教の話や、聞きなれない心理学用語などが頻出して、簡単には読み進められなかった。全く明恵上人のことを知らなかったので、この本で知ることが出来て良かった。
2016/10/20
きょちょ
明恵上人は、真摯にお釈迦様に帰依し、戒を守ることを苦しみながらも実践した僧。ただ、河合先生が言うほど彼の魅力を感じなかったのは、この著作は明恵上人の夢の分析に当然重きを置いており、彼の教えを詳しく伝えるものではなかったからかもしれない。これだけ長い間自身の夢を記述していくのは、なかなかできない事だと思うし、何よりも驚かされるのは、夢の中に頻繁に如来や菩薩が登場し、彼を導くこと。彼ほどの修業をしない限りこれほど如来や菩薩の登場はないのだろうな。華厳経にも興味を持ったが、今の私にはとうてい理解不能。★★★
2017/05/15
ネギっ子gen
不思議な感覚の夢を見た。わたしの父方のルーツ(高知なんだが……)における、意外な事実を知らされる(夢の中の話)。ご先祖様は、隠れキリシタンだったとして、それらしき遺物も見せられた。そんな事実は(たぶん)ない。隠れ念仏なら、まだ話はわかるが……、で、夢が覚めて、今の夢は如何に……とて、書棚から本書を持ち出してきた次第。思えば、上人の尊名と主著『摧邪輪』を教示して頂いたのは、大学の恩師。その後河合先生と上人のつながりも知り、高山寺にも何度かお参りさせていただいた――と回顧に耽りながら、ひさしぶりの再読に……⇒
2020/09/06
らい
意識に対するこころや無意識の領域とそこで大切になってくる夢が少しずつ見えてきたところでこの明恵。当時にして夢から高次の道への示唆を受けて自己に統合し、戒定慧を圧倒的に追求し、それでいて日常においては賢明な合理性も保持していた人が居たと。すごい話だ。そりゃ著者も驚くわけだ。柔らかな包摂状の自己に鋭い切断がどう加わっていくか、常にそういう方向性のイメージが伝わってきて人生をかけた課題だと思わされる。いやあ楽しいなあ。
2020/05/16
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