佃島ふたり書房 (講談社文庫 て 8-3)
佃島ふたり書房 (講談社文庫 て 8-3) / 感想・レビュー
遥かなる想い
第108回(平成4年度下半期)直木賞。佃島にある古書堂「ふたり書房」を舞台に明治の青春を描く。共産主義弾圧の嵐の中で、密やかな恋が進むが・・読んでいてなぜか優しい気持ちになるのは、登場人物に悪意がなく、昔ながらの日本の良さを著者が意図的に描いているからなのだろう。古本を巡る人の出会い・・そう言えば、いまや失われた古書の街並みがひどく懐かい。明治の時代を生きた梶田郡司と千加子、そして六司。郡司の背中の入れ墨をどんな想いで千加子は視ていたのか。時代を生き抜いた人間の強さと哀しみが染みてくる、そんな読後感だった
2013/11/24
goro@80.7
明治から大正、昭和の時代とともに本に魅せられ生きた人たちの物語でありました。毎回殺伐とした物語ばかり読んでいるんじゃいかんなぁ~。情緒のある物語で古書の世界を垣間見たり楽しい、そして佃島に想いを馳せる。「古本屋さんという商いは、よその物売りの数倍、商品に愛情をもたなくてはいけませんよ。ー」と客から諭される新米店主澄子。郡司さんかっこいいね~。古本屋さんでもあまり手に入らいない直木賞作品ですが、たくさんの人に味わってほしい物語です。また再読するだろうなぁという本になりました。
2019/11/06
ぶんこ
面白かったです。 古書店に奉公にして知り合った郡司と六司の、明治末期から昭和の佃の渡し最後の就航までの物語。 当時の佃島界隈の様子がじんわりと伝わってきました。 最後の佃大橋での郡司の佃島への思いには、いささかショックを受けましたが。 初版本や稀覯本等々の収集癖が無いのですが、この本を読むと嵌まってしまうと地獄か極楽か。 郡司さんの侠客のような性格は、少し離れたところでみると素敵だけれど、身近にいたら惹かれてしまい、苦労しそう。 ふたり書房のふたりの由来が後書きにあり、意外すぎて微笑ましい。
2015/05/10
hit4papa
東京は佃島の古書店「ふたり書房」を舞台に、明治から昭和にかけて、ひとりの男の人生をつづった作品です。はからずも古書店の下働きをすることとなった少年とその周辺が、震災や戦争を経て、街の風景とともに変わっていく様が描かれます。本作品は、本と友情の物語ゆえに好みのど真ん中。古書の取り引きのシーンは興味深く読ませてもらいました。少年から老境にかけての成長物語でもありますが、教科書的な押しつけがましくないのが良いですね。主人公と親友、親友の妻、娘の関係が、言葉にならない優しさに溢れているのもステキです。【直木賞】
2017/12/06
hirune
【Audible】悲劇に終わった恋に囚われ続ける郡司、その郡司に男も女も子どもまでも惹きつけられ執着する。魔性の男なのか郡司(^^;一体何人に密告されてるの、しかも逮捕されないし。民主主義になる以前の時代、思想によって、逮捕され 厳しい取調べ(拷問まがい?)そして最悪死刑。恐ろしい世の中だったんですね、でも弾圧されていた社会主義者が実現させた社会主義国家が、この戦前の社会ととてもよく似ているように感じるのは、皮肉なことですね☆
2018/03/30
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