贋作師 (講談社文庫 し 46-1)
贋作師 (講談社文庫 し 46-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
篠田節子さんは、いろんなタッチで小説が書ける実に器用な人なのだが、今回は日本の美術界を背景にしたミステリー。しかも、物語の終盤では主人公の成美によるハードボイルドまで披露して見せる。プロットの運びもスリリングで、その上にスピード感も十分だ。キャスティングも悪くない。ただし、小説の全体を覆う軽さは否めない。今回はまあそれでもいいのだろうけれど。人物造形の上からは、慧のそれに難点を感じる。構想が必ずしも十分に熟してはいなかったようだ。またミステリー仕立ての割には、謎解きがいささか杜撰な感も残る。
2017/11/29
ゴンゾウ@新潮部
有名画家の贋作師として生きた元恋人が遺した最期の作品。その絵には元恋人の最高傑作が隠されていた。修復師として元恋人の遺作を本人の作品として世に出そうとするが、有名画家の遺産を巡る陰謀に阻まれてしまう。元恋人の遺作の秘密を解き明かす内に自分も生命を狙われてしまう。話の内容はとても面白かったが殺人の手段が結構グロテスクです。
2016/01/30
カザリ
90年代のドラマのような、ラストの想像がついてしまうお話でした。篠田作品はそれでも、主人公が事件にむきあう個人的な動機がきちんと構造だてて描かれており、なんだかんだ恋愛未満のバディ要素があり、ラストは過去に決別できる成長とそれを可能にするきっかけがあり、と物語としてはとても丁寧で信頼できる作家だと思っています。
2016/09/18
エドワード
日本の洋画壇の重鎮・高岡荘三郎が自殺し、姪が相続した高岡の作品の修復を行う成美。作業の過程で判明する不可解な事柄―前期と後期で全く異なる画風の謎、「生き過ぎた」という遺書の謎。成美は、後期の作品は彼女の学生時代の友人・阿佐村慧が代作していたと想像する。高岡は本当に自殺したのか?アトリエに残された頭蓋骨は誰のもの?グロテスクと紙一重の、強欲、不治の病、まさに美術界の<死の舞踏>のごときミステリー。必死で描いた絵がことごとく駄作であると感じた阿佐村慧の心の闇が哀しい。「贋作師」という題には違和感があるね。
2018/05/08
GaGa
面白い。前半はミステリー、中盤からホラーテイストが交わり、終盤再びミステリーへと戻る。しかし、ある意味形を変えた恋愛小説であるとも言える。読み出したら止まらなくなり一気読み。美術界に纏わる話なので出てくる人物が主人公をはじめとしてアクの強い人ばかり。そこがなかなかリアリティがあって良かった。
2010/09/13
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