神話の果て 新装版 (講談社文庫 ふ 30-9)
神話の果て 新装版 (講談社文庫 ふ 30-9) / 感想・レビュー
k5
緊張の一か月のために弛緩の十か月がある。この文章を高校生の時に読んで以来、人生の91%は緩んでいてもよいのではないか、と思ってしまって現在の僕があります。それはさておき、久方ぶりに再読すると、前半と後半ですごく印象の違う本でした。第一章の「刺青の蝶が飛び立つとき」に象徴されるように、昭和でベッタベタなかっこよさと、一週間でたるんだ身体を作り直すというようなギミックに前半は引き込まれますが、後半ペルーの高地に行ってからは、マジックリアリズムを目指したかのような混沌の世界に。後半が成功しているとは(続く)
2021/03/08
HANA
南米三部作の二作目。他の二作の主人公が革命側だったのに対し、本作の主人公は潜入工作員。そのためか組織自体の内幕はあまり書き込まれておらず、工作員同士の死闘がメインとなっている。他の二作が目的までの一筋の道を描いているとするならば、本作はその目的の周りで血に飢えた獣たちが殺し合っているイメージ。構成故か主人公たちの印象は他の作品と比べ薄めで、読後残るのはラストで明らかにされた組織の全貌だとかスリーパーの寂寥感等。それでもやはり南米に降る血の雨や漂う硝煙の香りを十分に楽しめる一冊であり、読み応えは十分でした。
2024/06/01
drago @竜王戦観戦中。
面白かった。『山猫の夏』と比べると見劣りしてしまうが、それでも迫力満点。ただ、ちょっと話が長すぎるのに加え、図書館から借りた本が古すぎて赤焼けが激しく活字も小さいので、非常に読みにくかった。 ストーリーはテンポが良く、次から次へと登場人物が死んでいくので最後はどうなるのかと思ったが、エンディングは想定の範囲内。主人公・志度正平の意志の強さ、プロの殺し屋としての矜持が格好いい。それにも増して、邪魔者ポル・ソンファンの執念深さが驚異的。 ☆☆☆☆★
2014/10/26
アオヤマ君
約30年ぶりか再読。船戸与一はやはり強烈。持って回った言い回し、決めつけに好き嫌いはあるにせよ。喧騒、牛の臓物が唐辛子ともに焼ける臭い、マテ茶を沸かす臭い、刺青、星月夜、矜持、毒虫、貫頭衣、南風の啜り泣き、標的、終焉、雹、山刀。単語に何か別の意味があるかのように綴られる文章。暗喩。南米ペルーの山岳地帯を主とした舞台に!!!な破壊者たち。ケエナの旋律。奏。神話果つるとき。
2021/10/18
hit4papa
船戸与一 南米三部作の第2弾です。ペルーのゲリラ組織を壊滅すべく派遣された、日本人破壊工作員の活躍を描く冒険小説です。元文化人類学者にして殺戮衝動に目覚めた主人公という設定が面白い。血煙漂う西部劇を彷彿とさせる、スケールの大きな作品です。全編の血なまぐささや決着のつけ方からすると、男性読者向けの小説なんでしょうね。
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