月の塵 (講談社文庫 こ 41-4)
月の塵 (講談社文庫 こ 41-4) / 感想・レビュー
優希
心にしんしんと染み入る日々や自然は、老いと向き合った思いから紡がれているように感じました。誰にでも訪れる老いですが、その人なりのその時期の思いがあることを改めて気付かせてくれます。当たり前のことですが、遠い先のことのようで考えないこと。そんな晩年を月明かりが照らすように著者は優しく語っていました。残された日々はわずかなのに、尽きない興味と行動力。そして穏やかな目で見つめる過去の思い出。文さんの軌跡はとても輝いていたもののように思えてなりません。
2016/11/29
優希
優れた感性は持ち主を養うのだと心に染み入ります。日々を老いと向き合った想いが紡がれているように思いました。誰にでもくる老いですが遠い先のように考えず、そんな晩年を月明かりが照らすと語られていました。幸せと呼べる日々とは言えなかったかもしれませんが、思い描く晩年は優しいものでした。わずかな残されたわずかな日々の中で、尽きない行動力と穏やかな過去。心に染み入りました。
2019/06/01
双海(ふたみ)
ほんとうに幸田文さんはうまい随筆をお書きになったものだなぁ。随筆(エッセイに非ず)の名手。文さんに出会わなかったら、私が着物や浴衣を着ることもなかったのかもしれない。
2015/05/23
わっぱっぱ
優れた五感はその人を守り、鍛え、養うのだなあと、文さんの本を読むといつも思う。文豪の父を持ったこと、早くに他界した生母と養母とのこと、女であること、、、自分で選べなかった環境は、彼女にとって必ずしも幸せとばかり言えるものではなかったろう。けれどそれらは彼女の財産でもあったに違いない。 ということは、いま私が不幸の根源と捉えているものも、実は私を知らず養ってくれているのか。そうとわかったところで苦恨に感謝することは難しいのだけれど、乱れた気持ちにアイロンがかかったように、呼吸が少し正しくなったのを感じる。
2017/01/10
うた
格別に優れているわけではないのだけれど、なんとも収まりのよいしっくりとくる文を書く人だ。特に短い随筆ほど良さがある。表題の「月の塵」では父幸田露伴との思い出ともに日常のよしなしごとを綴っている。読むうちに、文さんの家の様子が立ち上がっているから不思議である。久しぶりによい眼、よいものの見方を持っている作家さんを見つけたようだ。
2013/09/23
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