機関車先生 (講談社文庫 い 63-9)
機関車先生 (講談社文庫 い 63-9) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
いやぁ、純粋に何の曇りもなく感動しました。瀬戸内の小島'葉名島'に1人の大柄な男性が姿を現します。その男性こそ、児童数わずか7人の小学校に新たに勤務する「吉岡」先生です。しかし「吉岡」先生は小さい頃かかった病気の影響で、話すことができず、手話と筆談にて会話をしていきます。そんな小さな港町でのひと夏のステキな出来事を穏やかに綴る名作でした。口のきけない「吉岡」を支える校長や産婆さんなど生徒はもちろん、他の人物たちも魅力的なキャラばかりで、穏やかなキモチで安心して読み進めていけるステキな大人の児童文学でした。
2019/07/20
はる
読んでいて心が清らかになる感じです。昭和30年代、小さな島にやって来た口のきけない先生と島の子供たちの交流を描いた優しい物語。「二十四の瞳」を思わせる子供たちとのやりとり。純朴な子供たちがとても愛らしい。その一方で、今だに残る戦争の影や、島の封建的な人間関係などもきちんと描かれています。好人物ばかり、どこまでも理想主義的な作風が心地良い。読後爽やかな良質の作品。
2019/02/06
夜長月🌙@新潮部
「二十四の瞳」を思い出させるような瀬戸内海の小島での小学校の先生の物語。児童書です。小学校は全学年を一人の先生がみる複式学級。そして先生は幼い頃の病気が元で話すことができません。先生が話さない授業の様子も描かれています。話さなくても子どもたちに伝わっていくのはやはり心と心のつながりでしょう。島の人たちも心を開いていきます。先生は次の正式な先生が決まるまでの臨時採用であったのでその期限が来てしまいます。別れたくない子どもたち、そして島の人たちも。決めたのは機関車先生でした。
2021/06/02
なる
大御所だけど未読の作家を読んでみようシリーズその6は伊集院静。瀬戸内海の小さな島に臨時で赴任してきた小学校教師と島の人たちをめぐる物語。機関車のように大きい風貌と、病気で口をきけなくなったことから、生徒から名付けられた「きかんしゃ先生」という愛称を微笑みながら受け入れる誠吾を瀬戸内の開放的な陽射しが包み込む。ムラ社会に存在する支配層と被支配層の問題、さりげなく触れられる差別、戦争の爪痕などに触れながら、少しずつ島に受け入れられていく先生の様子が微笑ましい。安心して読める展開なので児童文学としてもおすすめ。
2021/05/23
ナミのママ
第7回柴田錬三郎賞受賞。瀬戸内海に浮かぶ児童がわずか7人の葉名島。その小学校に来た体の大きな先生は口がきけなかった。綺麗な風景描写と自然の姿。閉鎖的な始末ならではの人間関係、力関係。個性ある登場人物。時代設定も少し前のためか、現実とは切り離して、小説として楽しめました。笑いも涙も、ほのぼのとしています。読み終えて心がほっこりします。
2019/01/09
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