反逆する風景 (講談社文庫 へ 6-1)
反逆する風景 (講談社文庫 へ 6-1) / 感想・レビュー
びす男
「無理な意味化はかえって風景の真意を裏切ることになる。風景のおもしろさを殺す。やはり、意味など明示する必要はない」。この本は著者のベストセラー「もの食う人びと」への裏切りである。彼は目にした風景ひとつひとつから意味を汲み取り、紡ぐことでそれを完成させた。しかし、同時に彼はたくさんの「無意味なもの」「文脈にそわないもの」を目にしてきてもいた。まるで、彼が頭の中で作ろうとするシナリオに「反逆」するかのように。いかに「無意味」をそのままに、エッセイとして表現するか、著者の感受性が光る一冊だ。あとで書評かきます。
2014/08/29
ちぃ
長らく読みさしていたものを、ようやく気分が乗ってきて読み終えることができた。筆者の場合は世界を見て回りながらの経験だが、私にも時々、見慣れたはずの光景が、出来事の中で全く違った意味を持って反逆してくるように感じることがある。そういうのを捕まえるには晴耕雨読か昼耕夜読か知らないけれど、たくさん読んで、たくさん自分の身体で経験して生きること。考えたことを文字にすること。その他特記事項としては石巻高校→早大卒っていう経歴が「あぁいかにもそんな感じね」って妙に納得してしまうバンカラさを漂わす本でしたw
2016/09/30
mizzan72
「もの食う人びと」よりも、辺見庸さん自身の心情(狡さ、いやらしさなど)にやや深く切り込んでいて、事象を、個人的な思い出などと比較している箇所も多い。だが、そこにはやはり、「もの食う〜」と同質の閃きがあった。辺見さんの文章は、やっぱり異質なのだ。素材を発見する野性的な嗅覚が、そのショックの源にある。しかも、筆遣いはとことん生々しく、対象は今にも手で掴めそうだ。
2015/08/23
mope
辺見さんの低い暗い眼差しが好きなのと同時に時として同じ根から来るものがペシミスティックに感じて、少し距離を取りながら読みました。「風景が反逆してくる。考えられるありとある意味という意味を無残に裏切る。のべつではないけれども、風景はしばしば、被せられた意味に、お仕着せの服を嫌うみたいに、反逆する。刹那、風景は想像力の射程と網の目を超える。あるいは、眼前の風景が、世界の意味体系から、額縁から外れるように、ずるりと抜けて、意味の剥落した珍妙な踊りを踊る…」新聞記者でもあった辺見さんの身体性のある言葉がいい。
2017/04/20
ロマンスカー大爆破
前半は食い入るように読んだけど、後半は普通のエッセイ集だった。貴重な風景を見落とさないように町を歩こう。
2016/02/28
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