ワイルド・スワン 下 (講談社文庫 ち 4-3)
ワイルド・スワン 下 (講談社文庫 ち 4-3) / 感想・レビュー
ehirano1
ヒロインが生き残れた要因が何だったのかとても気になります。かのV.フランクルがナチの収容所から生還したこととは類が異なるように思いますが、根幹は同じかもしれないと思ったりもします。改めて再読することでその片鱗が見えそうな気がしますが、果たして再読をする精神的体力があるか不安です。とにかく精神的に疲れた作品でした・・・。
2022/09/27
chimako
隣の国、中国の歴史に関して今まであまりにも無関心だった。人々の心は抗日戦争、国共対立、文化大革命によってズタズタにされた。誰も信じることが出来ず、ただ自分が落とされない為だけに隣人を売る。ありえない罪をでっち上げ、不毛ながら作業に駆り出される。疲弊に疲弊を重ねた末、何も考えないのが一番だと諦め細々とただ生きただけの多くの人々。気にいらないものを排除しようとするとき、それは個人の怨恨であり、そのような者に国を牛耳られる国民はたまったものではない。独裁者は主義主張が違っても只の独裁者なのだと改めて思う。
2014/03/20
wiki
最初から最後まで非常に冷静な筆運びであった。ただ事実を書いたような筆致の奥にとてつもない暗黒を見る。こうしたストーリー進行は、原爆を描いた小説『黒い雨』以来だった。このような近現代史を歩んだ事を知ってからは、今の中国について、同国出身の知人たちが「良いところもあるが、悪いところもある」と真情を語りつつ、尚国を愛する複雑な心境に僅かだが迫れた。国が崩壊すれば尚酷い混沌が待つ。上巻に描かれた抗日戦争や国共内戦などはそれだ。この最悪の国家の死と戦乱を避けるために、最悪の国家的精神崩壊が容認された。言葉もない。
2020/05/27
ころりんぱ
あまりの凄まじさにノンフィクションだということを、忘れてしまうような、とにかく凄まじい本でした。この百年を俯瞰し、膨大な資料や記憶をまとめ、自国の、家族の歴史として語れるのは、著者が超エリート特権階級出身だからであって、この時代の多くの中国人は吹き荒れる革命の嵐の中で、何もわからず、ただ身を守るために殴り殴られ、殺し殺されてしまうだけだったのだと思います。他人に対する妬みや怨みという負の感情を利用して、革命を進めようとした毛沢東の罪は大きく、永遠に拭われないと思います。
2014/02/26
空猫
下巻は著者自身の体験談。文化、娯楽、礼儀、自律、自由…は全て禁止され、教育どころか学校まで無くされ、復活したかと喜べば、勤勉は悪とされ、農、軍の作業を強要、全ては生まれとコネで決まり、知識も経験もなく専門職に就かされ、言論の自由など無く、反政府人は病気の治療も拒否され…読めば読むほどメチャクチャだ。人民同士を憎み争い合う事で支配し続けた毛沢東の死後には階級は廃止され資本主義が入り込み出したことは周知だが、これはほんの4-50年ほど前の出来事なのだ。そうそう人は変わらな…((゜゜;)\(--;)。
2021/10/09
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