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居場所もなかった (講談社文庫 し 47-2)

居場所もなかった (講談社文庫 し 47-2)

居場所もなかった (講談社文庫 し 47-2)

作家
笙野頼子
出版社
講談社
発売日
1998-11-01
ISBN
9784062637992
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居場所もなかった (講談社文庫 し 47-2) / 感想・レビュー

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あ げ こ

どこも住みたくない。どこも住みたくなかった。どこにも、の、に、を発音する余裕さえ失う。に、が抜け落ちてしまう程の余裕のなさ。追い込まれ具合。困難過ぎる。やりにく過ぎる。生き辛過ぎる。悪夢のようなズレ。どうしたって必要だというのに。その防犯と防音が。自分が現実を生きて行くためには。見知らぬ地名より広がる不安。字面だけで怖い。得体が知れない事への恐れ。どこも住みたくない。住む場所のなさ。居場所のなさ。外と自分のその隔たり、オートロックの必要不可欠さ。まったく伝わらなくてどうにもならない。無限にさえ思える地獄。

2019/05/21

あ げ こ

恐ろし過ぎる外。地獄の不動産ワールド。外のこの崩し具合、歪ませ具合がまず好き。怒り、不安、疑い、困惑…自身に多くの苦しみを課すばかりである現実を、不快に、滑稽に、溶かし尽くすようおぞましく作り変えてしまうやり口が。痛快でさえある。軽視、黙殺、理不尽かつ不当な仕打ちの数々。上手くいかなさ、そぐわなさ、居心地の悪さ。居場所のなさ。世界を生み出すほどに籠るもやもや。必要不可欠なオートロック。分厚い隔たりとして。外の流入を防ぎ、内の濃さを保つ為の。外とのズレにはもう、笑ってしまう。共鳴と後ろ暗さを含む笑い。

2015/11/29

サトゥルヌスを喰らう吾輩

この「も」使いが好きだな……と思って買ったのですが、そういう「助詞ひとつどう置くか」のようなことで好きな気がしたフィーリングってたまに花火みたいに運命なことがあると思うのです。このひとが書く「いま」が見てみたい! という衝動に従って最新作を読むかそこにいたるまでの蓄積から徐々に追っていくか悩ましいです。文庫版あとがきでことたりすぎて解説を斜め読みしてしまったのですが、どう見てもサバルタンの物語なのにまさかの気づかれずに評価されている……っぽいということが作品の説得力の何よりの証明のように感じました。

2018/01/10

かす実

言葉の扱い方の面白さと表裏一体の錯乱。こんなものが書けてしまう著者はものすごく生きづらいのではないかと想像する。「どこにも住んでないと錯覚できる装置」というオートロック観、はとても興味深いが、防犯に対する危機感の過敏さが尋常ではなくて、また日常の些細な局面でも被害妄想をどんどん肥大化させる傾向があり、それらのやや神経質すぎる資質が膨らんで暴走してスリリングな文章になる。とにかく言葉が多すぎて、さっと読んですべてをとる事はできない、散らかった部屋のよう。それでも全体を貫く孤独だけは切実に心に迫る。

2022/07/17

くままつ

自営業女性のお引越し顛末記…なんてまとめたくないくらいに感情・視界がうずまく一冊。不動産屋と大家の売り手市場ドヤ!みたいな様が昨今の就活事情と重なってみえる気がするのは気のせいか。不動産探しと職探し、どこか似てはいないかなー。

2012/10/02

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