戦国幻野: 新・今川記 (講談社文庫 み 11-9)
戦国幻野: 新・今川記 (講談社文庫 み 11-9) / 感想・レビュー
四葉
「芳菊丸(幼名)」「栴岳承芳(号)」「義元」と名が変わるにつれ立場、周囲が変わり、教えられて来た事から新たな自我を育てていく過程が面白く成長記として読むならとても魅力的に感じました。思いを込め難い隣国や他家との関係を兄弟という繋がりを通して見ることでその苦悩や受難をも共感しやすく描かれている感じ…ただ最後まで山本さんの生き様だけは理解できず…何方かその意味を教えて欲しいくらいです。最後は儚く皆川さんらしくない作品でしたけれども面白かったです。
2013/04/15
巨峰
織田信長・徳川家康そして武田信玄が主人公の小説の敵役として取り上げられることはあっても、真正面から描かれることの少なかった駿河今川氏。今川義元・雪斎を主人公にした待望の歴史小説。とはいうものの、そこは皆川博子。正史稗史を織り交ぜて、中世の妖しさの名残を感じさせる優れた物語になっている。 『瀧夜叉』『妖櫻記』が好きな人は是非。おいらは○本村だけで正体わかったぜ。
2010/04/07
けやき
今川義元を補佐した九英承菊(太原雪斎)を中心とした今川家の興亡に、富士修験に生き神とされた炸耶様の闘いを絡めて描いた伝奇小説。 今川義元というと桶狭間の戦いで、織田信長に蹴散らされた武将ですが、兄の玄広恵探と家督を争う「花倉の乱」を勝ち抜いたみたいです。 今川氏親を父にもつ5人の兄弟の物語でもある。史実かは別ですが(笑) 炸耶様の人生も波乱に満ちています。 物語の最後には義元の嫡男の氏真が登場。 雪斎に「天下はいらぬ」と答え、今の<さとり世代>を思ったりしました。 太平の世を生きる理想の姿かも。
2014/07/31
rakim
歴史小説と思ってはだめ。伝奇時代小説というべき。群雄割拠の時代、多少主筋からは離れた駿河の地で、権力争いと愛憎劇が絡んで独特な世界を繰り広げていきます。修験者群像の記述が妙に長く、大筋が捉えにくい気がしたところが惜しいです。皆川さんの作品としては少し違う趣でした。
2012/01/29
kinta
今川、という「敗者」としてか見られることの多くない氏族の家庭内の奇妙な結びつきを皆川流に料理したクランの歴史。地政学上で、どうしても相模、甲斐との同盟そして三河尾張の拡張路線は規定路線として、それ以外を描く。故に富士における修験道というある種この国の裏歴史を奔放な筆で描き、そしてその中からかの有名な軍師も生まれる、という離れ業もやってのける。そして義元の史観から生まれた、いきなり現代史観で生きる氏真という人物の誕生。結句既存の歴史は放置して氏真の思考が出来るまでの物語といってもいいかもしれない。
2023/11/06
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