義民が駆ける (講談社文庫 ふ 2-10)
義民が駆ける (講談社文庫 ふ 2-10) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
痛快な余韻。著者はきっと『腕によりをかけて』執筆なさっただろう!地元に語り継がれる史実、しかも美談を元にしたものだからだ!天保の改革でお馴染みの老中水野忠邦、いわば当時の最高権力者から荘内藩に理不尽な所替えの命が下る!命は絶対!一番困るのは百姓!飢え死にも出るだろう!一部の百姓が『江戸に直訴に!』と立ち上がる❗しかもお題目は『自分達のお殿様がいかに素晴らしいか、我々は二君には仕えぬ!』やがて巨大な波となり、天晴れは南町奉行矢部の差配‼️百姓達の訛り言葉と手紙の文言が頁繰りを止める程生き生きした傑作‼️🙇
2019/05/29
Book & Travel
天保期、荘内藩が命じられた理不尽な国替えに領民が抵抗した天保義民事件の実態に、藤沢氏が迫った作品。正に骨太の歴史小説という印象である。老中水野忠邦の思惑、沙汰取消しのために四方に手を打つ荘内藩、そして嘆願のために次々と江戸へ上る百姓たち。それぞれの立場の思惑と動きが丹念に追われ、とても読み応えがあった。美談でなく、自分達の為に、したたかさと粘り強さと意外な組織力を見せる百姓たちの生身の姿を描き切っているのは、庶民に寄り添う著者ならではだろう。藩(武士)と百姓の微妙なバランスの関係も興味深かった。
2021/01/14
ach¡
史実は小説より奇なり、庄内(山形県北)の歴史が素敵すぎる件♡藩に突如下った三方国替えの命。不条理な沙汰に納得できずも巨大な権力の前に成す術なし…その窮地を救ったのは剣豪でもヒーローでもなく、つましく生きてきた庄内のお百姓さん達だった!最初から彼らに勝ち目はない。しかし弱者が作った大きなうねり、幕閣に立ち向かう姿に勇気りんりん♪元気100倍!昨日のように今日があり今日が何ごともなく明日につながる。そんな変わり映えしない暮らしが光り輝いて見えるその瞬間を彼らと共に安堵し喜びを分かつ。寒梅忌に庄内へ想いを馳せて
2016/01/26
酔拳2
藤沢周平先生の珍しく長編。時代物なんですが、剣豪がばったばったと敵を切るでもなく、盗賊改が盗人を捕縛するでもなく、町人の許されない恋でもなく、珍しく農民たちが活躍する話です。お国替えを阻止すべく、幕府や隣国に嘆願する姿はいじらしくもあり、強かでもある。藩の上層部と幕府と農民の微妙な駆け引き。これ実話らしいね。老中水野忠邦が敵なんだけど、この事件の後も、しっかり老中やってた。天保の改革とか、今の経済政策では最低だと思うんだけど、彼なりの理想があったんだろうな。好きじゃないけど。
2020/03/12
けやき
天保義民事件を描いた藤沢周平の歴史小説。ひとりの義民がいたのでなく、庄内の農民たちひとりひとりが立ち上がったというのを知らず、面白く読んだ。水野忠邦と酒井家の人々の緊張あるやり取りもよかった。
2023/07/26
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