アンダーグラウンド (講談社文庫)
アンダーグラウンド (講談社文庫) / 感想・レビュー
まーくん
地下鉄サリン事件からはや四半世紀。裁判も結審し、昨年には刑も執行された。しかし予期せず事件に巻き込まれ命を落とした方は勿論、その遺族、重い後遺症に苦しみ心身に深い傷を負った方々にとって、終わりの日はないであろう。著者は被害にあわれた60余人にインタビューし、事件の詳細を描いている。その日の出来事だけでなく、各人の人生の軌跡も合わせて語ってもらっていることにより、抽象的な〇〇さんではなく、具体的な人々の受難として、その苦しみが深く伝わってくる。そして各人の語りの重ね合わせが事件全体の姿を浮き彫りにしている。
2019/05/23
ムッネニーク
65冊目『アンダーグラウンド』(村上春樹 著、1999年2月、講談社) 1995年3月20日。カルト宗教団体「オウム真理教」は東京都の地下鉄構内でサリンを散布するという、未曾有のバイオテロを行った。俗に言う「地下鉄サリン事件」である。 本書は村上春樹がその事件の被害者、および被害者遺族にインタビューを行い、その証言を纏めたノンフィクションである。 証言者の数は60人以上。750頁を超える大ボリュームの一冊である。 〈一九九五年三月二〇日の朝に、東京の地下でほんとうに何が起こったのか?〉
2022/10/13
hitomi.s
いま、このタイミングだからこそ、読み直したいとおもった。いろんな事件や事故や社会情勢やらに、私自身は言葉通りに「部外者」で、でもどこかのタイミングで巻き込まれ何かがあるかもしれない。そんな漠然としたことを漠然とおもって、読み直したいとおもったのでした。 読後「私には何ができる」とか「私だったらどうしただろう」とか思えるほどの機転をえるほど大きい人間でもない。それでも、何かのタイミングで何かに遭ったらわたしらしく真摯に向き合いたいとおもった。
2017/09/22
抹茶モナカ
1995年3月20日に地下鉄で何が起こったのか。村上春樹さんのファンで新刊でも購入していたけれど、挫折を繰り返していた本。僕自身、ある程度の年齢になったのもあり、日本人の市民生活について知りたくなり、改めて読んでみた。営団地下鉄の職員の職業倫理の高さにじんとして、目頭が熱くなった。村上さんが「物語」について語り出したのは、この頃で、当時は少しピンと来なかったのを覚えていて、その頃から、村上春樹さんが少し苦手になったのは、事実。でも、読み通すと、少し自分の中で何か変化があった気がした。
2015/08/13
ハイク
地下鉄サリン事件に遭遇した約60人の被害者に直接インタビューし、被害にあった状況をまとめた本である。罪のない一般市民が偶然サリン事件に会い被害を受けた。著者の力作であり読み進めると、被害者の当時の様子は想像を絶する。皆同じ形式の構成なので、一気読みせず時間をかけて読んだ。被害者は東京近郊に住まいを持った普通の生活を送っていた罪のない一般の人々である。被害者は過度のパニックにならず、お互い助け合って困難を克服した様子が印象に残った。最後にこの事件で、一人の死亡者の家族や奥さんの話を載せたのも痛ましい。
2017/04/19
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