朽ちた樹々の枝の下で (講談社文庫 し 42-5)
朽ちた樹々の枝の下で (講談社文庫 し 42-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
650ページになんなんとする長編だけあって、実に丁寧に描かれている。事件の全貌がなかなか明らかにならないところもいい。探偵役の二人のアマチュアぶりも好ましい。その一方、サスペンスとしての展開は遅い。また、全く別の2つの殺人の原因も方法も全くの同工異曲というのは、いかにも残念である。自衛隊の組織としての問題に対しても、踏み込んで行きながら、最後は腰砕けになるのもまた残念。他方向にプロットを張り巡らしながら、いずれの結末も甘いのである。語り手の「私」と慶子の造型が緻密で魅力的なだけにあれこれと惜しまれる作品。
2023/05/19
ユザキ部長
今を大切に生きなかった後悔。その結果として過去を辛く見てしまうのが悲しい。心を暖かくする嘘の大切に気がついた。いや泥臭い嘘でも嘘を信じるしかない。亡くした者を取り戻す事は出来ないから。すがる思い、人を傷つけ、我が身をも傷つける。贖罪でもこれ以上ほっとけない。そう思った。
2018/12/20
タックン
妻を事故で失い札幌を離れ林業に携わった男が、自衛隊の演習場の森で出会い助けた若い女性はなぜ逃亡し誰か?その謎を追うミステリー。 そこまで執着して女性を探すことに疑問を覚えるが、妻の事故の謎と己の再生のためって考えたら多少は理解できる。 北海道の自然を舞台にしたミステリーはそれなりに読み応えがあった。 若い女性の健気な姿が印象に残った。 真歩さんはやはりこの頃の作品が荒削りオリジナリティがあって面白かったって改めて思った。
2022/01/05
papako
ホワイトアウト以来。妻に死別した男が北海道の森の中で逃げる女を助ける。自衛隊の不祥事、森林保護団体の伐採反対運動。妻の事故の原因。失踪した逃げる女を探すうちに過去の自分と向き合う主人公。様々な思惑が交錯するが、何が真実で何が疑惑なのかは灰色のまま。ただ、明らかにするだけではなく、嘘にすがって生きたいと願う人々。決着することだけが結末ではないと教えられた。義父と主人公の和解があたたかい。読み応えあり!
2014/03/17
ゆみねこ
妻を喪った喪失感から逃れるように森林作業員として働き始めた尾高健夫。ある早朝自衛隊演習場と隣接する森林で一人の女性を救出する。病院から逃亡した女性を探し、真実を追うことに自身の再起をかける物語。うーん、大胆な逃亡シーンや森林の描写なんかは迫力があるけれど、これはあまり好きじゃないかも…。
2013/07/09
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