少年H(下) (講談社文庫 せ 11-2)
少年H(下) (講談社文庫 せ 11-2) / 感想・レビュー
mae.dat
少年から青年へと成長する多感な時期を、戦争の最中で過ごす事になってしまった。言いたい事を自由に話す事も許されない世の中で、鬱積するものがありますね。矛盾に苛まされますよね。戦後の手のひら返しももやるけど、周りのお友達が大人やね。歴史の授業で、何年に開戦し、どんな経緯を経てポツダム宣言が出されたのかなどなども、一般教養として必要な知識かも知れません。それのみならず、当時を生き抜いた少年の視線を通して、市民が何を感じ、どう生きたかを知る教材として価値が高く感じます。……墓まで持って行く秘密を書いちゃったよ。
2021/09/25
chantal(シャンタール)
小学生から旧制中学と、子ども時代のほとんどを戦争の中で生きたH少年。戦時中の暮らしがどんなだったのかが生き生きと描かれている。色んな国の友人が突然敵国人になってしまったり、思っている事を言えない、どんどん暗い方向へ流れて行く時代に必死に抗い、終戦後のあまりに大きな変化に着いて行けず思い悩む痛々しいH少年の姿に私の心も痛んだが、その姿はどんな時代でも自分の頭でしっかり考え、とにかく生き抜くんだと教えてくれた。「書き残さなければならない」と作者は思ったのだろう。私たちも読み継ぎ、伝えていかなければならない。
2021/08/10
kinkin
この本が評価される反面、天皇制や国に対する考えなどの面で事実と違うというような批判もあると知った。事実かどうかは体験したものが言うことであって見聞きしていないものが批判しても仕方のないことだと思った。戦争というものの受け止め方は様々にしろ好感を持った人などいないだろう。私の亡くなった父は著者より二つ上の昭和三年生まれ。少年兵で戦場に行った。子供の頃戦争映画を観ていた私に言ったことは「戦争はかっこいいなんて全然ない、あんなことやっても何もならない」今まさに直にそう言える人がほとんどいなくなってきた・・
2015/05/05
Willie the Wildcat
大人のごまかし・・・、時勢を踏まえると一方的に責めるのも酷な面もあるが、慈悲?思いやり?人々の荒んだ心も同じ。目の前の矛盾と、差し迫った「生」。戦争の意味を問う。譲り受けた本を持ち帰る際に目にした土手の梅。自然から感じる季節感と対比させて、人間の愚行を暗喩しているかのような描写が印象的。総ルビとした著者の思いを私なりに感じざるを得ない。街灯のペンキ塗りでの気づき!これが、真の心の”再生”への足ががりかもしれない。岩波文庫への執念!?わかるなぁ。『バスラの図書館員』を思い出す。
2015/11/07
りょう君
ネタバレになるかも・・国民学校から神戸二中に進学し、少年期から青年期になっていく主人公H。教練射撃部に所属し、実弾を打ち、敗戦の時は部の三八式歩兵銃を地中に埋め、ひとり涙する。原子爆弾の投下、ソ連参戦、玉音放送、戦後のGHQ政策の全てに疑問を抱き、苛つき怒り、遂には親子喧嘩に発展し家を出る。中学校に住み着き、なんとか卒業し、フェニックス工房に就職。最後に未来が見えたのは、とても良かった。賛否両論のある小説だが、主人公Hがいろんなことに苛ついたのは、戦中、戦後の食糧難による空腹が原因かも・・
2015/10/13
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