奪取(下) (講談社文庫 し 42-7)
奪取(下) (講談社文庫 し 42-7) / 感想・レビュー
サム・ミイラ
あれから五年。仲間を失った主人公は独り宿敵東建興業の監視と盗聴を続けていた。図らずも友との再会からチームを再結成、幸緒も合流、より完璧な贋札も完成に近づく。下巻ではこの贋札を使い帝都銀行と東建興業を嵌める手順が細かに描かれてゆく。昨日の敵は今日の友光井の仕掛けが実に渋い。まるであの名作映画「スティング」の舞台裏を覗いているような感じだ。ラストはどんでん返しに次ぐどんでん返し!エピローグはもうサービス満点。とにかく爽快感と切なさを存分に味わえる傑作。お楽しみ下さい。
2015/04/10
じいじ
この下巻で、主人公が目指すものは、どこから見ても正真正銘の本物、完璧な「偽札」を造ること。紙幣の印刷技術が、製版、印刷、インク、用紙…すべてにおいて、その時代の最高ハイテク技術で造られている、ことがよく分かりました。その技術の舞台裏を著者は丁寧に解き明かしてくれています。(所々、専門的にここまで詳しくなくて、と思いましたが…)ヤクザ組織とその裏でつながる都市銀行の幹部を相手にした復讐劇、一筋縄ではいかない筋書きは、面白くて愉快で存分に堪能しました。真保裕一は、期待を裏切りません。
2017/05/21
ALATA
「ニセ札で儲けたら、その金でもっと精巧な紙幣を作る」一度きりの人生だから後悔しない。ニセ札造りに必要なもの、熟練刷り師か高性能印刷機か?それを逆手にとるアイデアが秀逸。そして、うねるように話が進むストーリー展開がスピーディー。ヤクザの佐竹、水田のじーさん、紅一点の幸緒とみんな魅力的。犯罪小説なんだけど困難を乗り越え、目標を次々と乗り越えていくところは爽やかな青春小説といった印象、面白かった★5※ちょっと小林信彦の「紳士同盟」を思い出した。最後のオチも真保さんらしい。でも、これでいいのかも。
2023/06/12
修一朗
下巻になってもスピード感衰えず!最後まで走り切りました。上巻同様エンタテ-メントに徹し,こだわりのディテールとその他(割り切り)を明確に書き分けました。スカッとは終わらせないだろうなとは思ってたけど,こうきたか。ちよっとチマッとした終わり方でした。光井のじじいねぇ… 下巻のメイン,偽札作りのくだりはじっくりと読ませて頂きました。化学が専攻の私でもしんどかった。でも,作者のこだわりには向き合わないと… 偽札は,知識的には自分でも作れる気になってくる,が実現は無理無理…。さぁ次は小役人シリーズだな…
2014/04/13
TATA
つらかった印刷技術の話を乗り越えいよいよ偽札づくりの物語は佳境に。多分最後はこうなるだろうなあという観測も微妙に裏切られたものの比較的心地よいエンディング。このテンポが真保さんの真骨頂なんでしょうね。ユーモア溢れた分だけ「ホワイトアウト」よりも本作の方が好みです。真保さんのペンネームってここから来たんだ~(笑)。
2018/11/14
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