ゆるやかな絆 (講談社文庫 お 2-8)
ゆるやかな絆 (講談社文庫 お 2-8) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
単行本の刊行は1996年(大江61歳)。『恢復する家族』とセットになっているようで、そちらを先に読むべきであったか。本書には大江夫人のゆかりさんの画が何点か付されていること、また小説の形式を取らずエッセイとして書かれていることなどが、これまでとは異なっている。また、『静かな生活』のマーちゃんによる語りが二重の仮構であったことが明かされる。大江は「小説の秘密は、それがどのように語られるか、につきる」と述べているが、まさしくそれは大江文学の本質を明かすものであると思う。文学は「いかに語るか」なのである。
2019/01/26
金吾
家族特に長男との交流が読んでいて心地よくさせてくれました。様々な事柄に対する静かな感覚を持っているようにも感じました。
2022/08/16
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️子供の頃、父の書棚に沢山の大江さんの本がありましたが、題名からして難解な物が多く、手に取ってみようと思った事は皆無でした。それから40年程経ちますが、大江さんは超難解と言うイメージが刷り込まれ一度も眼を通した事はありませんでした。この本は20年程前の物ですが、小説では無くエッセイで、ノーベル賞受賞の翌年の当時60歳の著者が考えたり感じたりした事を割と明け透けに語っており、平易で分かりやすい内容でした。客観的に人や物や状況を視る訓練を長年して来た人の文章を読むのは自己啓発本よりも刺激になります。
2015/05/02
sabosashi
広範なテーマが扱われ、けっして手をぬくようなマネはみせていない。かくして実に興味深い。伊丹万作の未亡人とも長く同居していたなどということも初めて知る。月並みな言い方だが素顔の大江健三郎を知ることができる。家族それぞれについても、とりわけ息子の光るについても。気がかり:メキシコシティーのトラテロルコ広場のことがトロカデルロ広場と記されており、これはおそらく校正者の落ち度ではなかったかと思われる。
2024/08/24
Jonathan Trotz
久しぶりに再読。僕の持っている作家さん直筆サイン入りの唯一の本なので、非常に思い入れのある一冊です。これからどうやって生きていこう、どういう姿勢で物事に対処していくことを基本にしようか、そういった生きていく上での根本の所で迷った時に読み返しては、それまで気づかなかった、あるいは忘れていた自分のベースにある考え方(そうだ、僕はこういうことを基本にすえて生きていこうと決めてたはずだというような)を再発見させてくれます。
2012/04/08
感想・レビューをもっと見る