花櫓 (講談社文庫 み 11-10)
花櫓 (講談社文庫 み 11-10) / 感想・レビュー
キムチ
皆川作にしては拍子抜けするほど生煮え?の大人しい恋のさや当て。時代は江戸期・・天明の辺り。江戸を代表する3座の一つ 中村座勘三郎の異母娘2人が主役。脇を伝九郎・七三郎が緩い恋のグラフティを広げる。本櫓と脇櫓(馬場)・次第に傾いて行く中村座。若大夫と源次が馬場のしきりに腕を磨いてのし上がって行く。色子・衆道初め「激しく口を吸い合う」といった場面が随所で皆川氏らしいぎらつく世界があるし、資料探索を感じさせる細部の描写など江戸期の見世物をリアルに感じさせ、歴史ものとしてはとても興味深く読んだ。
2014/05/13
四葉
八代目中村勘三郎の二人娘と掛け小屋の若太夫源次の物語。外は華やかでも内は苦しく濁った人間関係で彩られる三座の状況は、現実までをも芝居の世界と錯覚させる。そんな世界の中に生きるからこそ「舞台の上ではせめて美しく…」そう言い切れてしまう一部の者の心意気には惚れてしまいそうになります。主人公とも言える三人の成長が目立つ本書ですが、櫓の支えとなった語らない幾人もの心意気も意識せずにはいられない。歌舞伎と言うものに興味がなくても楽しめる一冊。
2013/06/18
renren
すごくよかった。中村座の娘二人(同年・正妻と妾腹の子)が主人公ということで、ありがちな女二人の愛と欲をめぐってのどろどろになるのかと思いきや、最終的にものすごく正統派の「櫓」=「芝居をかけること」への人々の思いに執着。最終章に近くなるほど、芝居に賭け、金に苦しみ、愛に賭ける人の想いが切なく圧倒的に胸に迫る。これだけの世界をよく書き上げたなあ。主人公の娘ふたりと、男さんにん、それぞれの個性と思いもほんとにすごい。再読したい。
2012/03/25
ごま
花のように美しく華やかに儚かに。ままならぬ己の想いに彼の人の心。嫉妬に猜疑、野望に腕力。夢を魅せるその舞台の裏側は夢だけではままならぬ現実がある。それでも魅せるのだ、絢爛なる世界を、それが心に末長く灯ると信じて。娘から女へ、御しきれぬ身の内に潜む蜜が身も心も翻弄する。複雑に絡むのは人間関係だけでなく己の心情。年を重ねると共に移り変わる心情が胸をつく。たとえ火に呑まれ呆気なく喪っても、再び立ち上がる、より華やかにより絢爛に。それが粋を売り物にする者の心意気。
2015/12/07
めっちー
恋物語とも歌舞伎物ともとれる。少女が女に成長していき、たくましくなっていく。歌舞伎や江戸の勉強になるけれども、難しい言葉も多かった。歌舞伎を巡って様々な思惑が繰り広げられて、どんどん面白くなってた。
2012/04/29
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