怪奇小説集 恐の巻 新撰版 (講談社文庫 え 1-43)
怪奇小説集 恐の巻 新撰版 (講談社文庫 え 1-43) / 感想・レビュー
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昭和という時代は近くて遠い。その未知を孕んだ昏さが奇怪な出来事をよりリアルに魅せる。心霊現象も人間の不確かさもよく分からないから怖い。そんな心理の真理をついた1冊。あなたの知らない世界と改題した方が良い。遠藤君も彼の周りも相当にヤバい➕遠藤君は人を信じ過ぎる嫌いがある。K音大でフルートを教えている彼女が虚言を吐くとは思われない。とか、学生時代からの友人で橋本という厚底メガネの地味で面白みのない男も嘘をつくような人物ではない。とか、真面目か!私も遠藤君がこんなミラクルな作り話をでっち上げる男とは全く思えない
2019/04/11
あたびー
#日本怪奇幻想読者クラブ 実話と創作の混ざった短編集。三浦朱門氏と共に体験した熱海の旅館の怪異について、その発端に加えて後からそこへ突撃追体験(!!)しに行った話まで何度か書かれている。この本には出てこなかったが、怪異の起きた場所へわざわざ乗り込んで取材をしようと言う松原タニシさんみたいなことまですると宣言されていますから、よほど豪胆なお人なのかと思いきや、巻末夫人の回想によればものすごいビビりだったそうです。激辛が苦手なくせに食べたがる人のようなものでしょうか。続いて「怖」の巻を読みます。
2020/08/05
夜間飛行
どの話も少しずつ自分の体験に重なる。見知らぬ宿に泊まる不安(三つの幽霊)、虫がへばりついてくる不快感(蜘蛛)、写真を見て「えっ、これが自分」と思う違和感(黒痣)…等、本書の話はどれも、日常の「嫌な感じ」を核にしている。思うに、人が怪異譚に惹かれるのは、そういう小さな異変を拡大してまじまじと見つめたい願望ゆえではないだろうか。痒い所を掻きたいのと一緒である。一つ一つは些細なことだが、それら「嫌な感じ」は我々の心の底にある大きな恐れへと、どこかで繋がっているような気もする。本書はそのための治療薬かもしれない。
2013/10/03
みや
73年に刊行された短篇集から9篇セレクトして収録。まずもって文字が大きいのがありがたい。フランス留学中の霊体験や熱海での三浦朱門との恐怖体験など、自らの実体験談が織り交ぜられているので、エッセイのようでもあり、いずれの話も虚実は定かでない。読者を煙に巻こうとするいたずら心も感じられるが、相当な怖がりだったという著者のビビリ具合も行間から滲み出ていて面白い。
2021/07/15
あずみ
印象に残った作品は「蜘蛛」と「あなたの妻も」の二作。どちらも気味が悪く、また生理的に嫌だと感じるような作品。霊よりも人間の行動の方がよほどぞっとする。
2015/09/13
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