リンボウ先生の書物探偵帖 (講談社文庫 は 42-2)
リンボウ先生の書物探偵帖 (講談社文庫 は 42-2) / 感想・レビュー
しずかな午後
リンボウ先生の書誌学エッセイ。前半は書誌学の用語について、教科書的な内容を、軽妙な筆致で解説している。そして後半が実際の古典籍の話となっていて楽しい。書誌学は地味で大変な仕事だが、一冊の古い本から、それを生み出した社会や人々の姿が立ち現れてくる様は、やっぱり感動的である。嵯峨本『伊勢物語』をオーダーメイドする本阿弥光悦の美しい工房、三都で版木をやり取りしていた江戸の出版事情、西鶴や芭蕉の基礎教養でもあった『古文真宝』、謎の本『文占』から見ていく江戸のラブレター指南、どれも愛おしい内容のエッセイである。
2022/06/09
晴
大学の先生からの推薦。書誌学と聞いて難解極まりなく、かつ誤解を受けやすい学問をマクドナルドのマニュアルと寿司職人を例に分かりやすく解説してあるので(ある意味)門外漢の私にもしっくりときて理解できました。刊本か写本どちらかとか、その書物の歴史の背景を理解するまではよい書物をたくさん見る経験が必要なんだなと感じました。
2016/08/17
Aminadab
大むかし単行本で読んだが文庫で再読。「デフォルト」を決めてそれは書かないと決めれば目録の分量は格段に縮減できる(33頁)。「封面(表紙の見返し)」には外袋と同一の版木が使われることが多いのでここには誇大な宣伝文句があることが多い(108頁)。校訂に際しては現存する写本の系統樹を見さだめた上で「低部批判」,それでダメなら文脈や他の用例から「高部批判」と進む必要があり、この手続きを飛ばすと間違いの上にもひとつ間違いを重ねることになりがち(177頁)、など。
2015/06/06
Ánië Tasartir
「あるものを認識するためには、そのものだけを見ていてもだめ」「ゼロ情報」「直観という名の論理」…決して書誌学という特殊な学問だけの話ではなく、どんな仕事にも、人間関係にも、当てはまりそう。途中ちょっと専門的な説明を我慢すれば、後半は一章ごとにドラマがある、ワクワクする世界です。
2012/08/07
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