狐罠 (講談社文庫 き 41-1)
狐罠 (講談社文庫 き 41-1) / 感想・レビュー
nobby
冬狐堂シリーズ1作目。骨董品を巡る長編ミステリーに興味深々だが、知識や業界の理解になかなかついていけず…贋作を巧妙な「目利き殺し」で摑まされた陶子が、巨悪な存在に逆に罠を仕掛ける様は痛快。それに絡む殺人への容疑もかかり、その展開は複雑で極めて難解。登場人物の役割とその個性はピッタリで分かりやすい。強いて言えば、陶子が無防備に派手に動き過ぎ(笑)終盤明らかになる真相には二転三転見事にひっくり返される!一応、悪は倒されるが、ちょっとスッキリしない結末にモヤモヤ…
2017/02/13
ちょろこ
古美術の世界もミステリも両方楽しめた一冊。初めて触れる古美術、骨董品の世界が思ったよりも面白く楽しめた。想像以上に波紋を呼ぶ贋作、「目利き殺し」にも驚かされた。最初は復讐にただ燃えているだけに思えた、主人公 陶子。ストーリーが進むにつれて「旗師」としてのプライドと、この世界を相手に女一人で生きて行く強さが感じられ、その姿にすっかり魅了されてしまった。ラストのクライマックスもミステリとして充分満足。些細な描写が重要ポイントだったりと読み応えあり。おまけにあのお店…粋なはからいにニヤリ。
2018/05/14
セウテス
冬孤堂シリーズ第一弾。骨董という特殊な世界を、旗師(店舗を持たず同業者や顧客の間を廻る業者)の宇佐見陶子を主人公に描いています。業界内で悪辣なやり方で、巨大な利権を握る橘薫堂に贋作を掴まされた陶子は、「目利き殺し」を仕掛け返そうとするが殺人が起こり、物語は思わぬ方向へ向かい出す。殺人事件の犯人は誰か、動機は何かは勿論、陶子の作戦は成功するのか、どんどん引き込まれ一気読みになる位に面白いです。結末にはどんでん返しが仕掛けられていますが、犯人もトリックも紐解ける様に、しっかりとした伏線が置かれている良作です。
2015/03/20
あつひめ
蓮丈シリーズに続き、冬狐堂シリーズに手を伸ばしてみた。骨董の世界は闇の世界のようで人の繋がりや思惑が隙間なく絡み合っている感じ。これは繰り返し読まないと一度では北森さんの「罠」は見抜けないような気がした。宇佐見陶子の人生の一篇を見た感じ。それぞれの個性が表現されていて作品が立体的になっている。だから、余計に引き込まれてしまうのだろうなぁ。騙し騙され・・・それでも信頼と言うものもある古骨董の世界。実生活では見ることができない世界だから興味深く読める。北森さんの骨董屋民俗学に対する知識の豊富さに脱帽。
2012/12/23
HANA
読友さんから紹介してもらった一冊。素敵な本の紹介ありがとうございました。いや、面白かった。「器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑かす」とあるが、骨董もかような魑魅魍魎が蠢く世界にあれば欲望に当てられ実際に精霊が宿りそう。出てくる登場人物が、ほぼ全員付喪神のような怪人ばかり。その怪人がどこでどう繋がっているのか贋作を巡って虚々実々のコンゲームを繰り広げている。僕のように贋作や骨董に詳しくなくても、そこは詳しく書かれているのでよくわかったが、同時に絶対に近付いてはいけない世界だともよくわかる。
2013/10/26
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