霞町物語 (講談社文庫 あ 70-5)
霞町物語 (講談社文庫 あ 70-5) / 感想・レビュー
ケイ
霞町の交差点から坂を少し上ったところで二年間働いていた。浅田次郎がこれを書いたのはその頃じゃないか...。大学時代も広尾の図書館からこの舞台辺りはよく歩いたな。『君は嘘つきだから小説家にでもなればいい』で読んだ浅田次郎が見え隠れする。しかし彼は嘘つきだから、全部信じちゃいけない。歌舞伎で声をかける頃合を知るおばあさんが、霞町の叙々苑で一人で肉を焼いて食べていた粋な老婦人に重なる。美しいお手本のような日本語と江戸っ子な話し言葉が混じり、郷愁漂う文章が消えていった街に住んでいたヤクザな若者を語る。
2018/11/21
ケイ
大成駒!の大向こうがまた聴きたくなって、ページを開く。今の西麻布の近くに昔はあった町の暮らし。それを切り取った写真たち。これを読んでから、歌舞伎を見るたびに、少年の祖母のような人が三階のどこかにいて、今の仁左衛門やら藤十郎やら、菊五郎らを観ているような気がしていた。雛の花、急かしちゃいけないうなぎ、運転手付きの紳士。一度読んだら忘れられない話たち。江戸っ子の気風の良さがいきづいているから、粋った彼らに鼻白まずに少し我慢して読むことをおすすめします。
2020/02/28
じいじ
とても面白かった。著者の自伝かと見紛う小説です。浅田小説の切なさと、ほろ苦さと一緒にホッとする安らぎを与えてくれるお話です。主人公・僕の故郷、青山・麻布・六本木に挟まれた邸宅街「霞町」(町名変更で今は消えた)で、親子二代にわたって営む写真館を舞台にした物語。何たって、孫を溺愛する祖父・祖母が痛快でカッコよくて楽しいです。物語を面白く引っ掻き回してくれます。とりわけ、昔深川の辰巳芸者だった祖母の気風と気丈さに惚れ惚れします。スカッとする気分にさせてくれ青春物語です。
2019/11/08
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
明治生まれの祖父が始めた古い写真館の三代目となる主人公を中心とした連作短編集。「もはや戦後ではない」と言われ、古き良き時代が終わりを告げるそんな頃。ノスタルジックな青春物語でもあり、家族の物語でもある。深川の芸者であった気風の良い祖母の秘めた恋を描いた「雛の花」、祖父が愛機ライカで撮った最後の写真を描いた「卒業写真」。読み終えた後にじんわりと感動が込み上げてくる、そんな小説でした。流石、浅田さんと言える作品。五つ星です!★★★★★
2017/03/27
Apple
メインキャラクターの写真館の祖父が、職人気質でありつつ江戸っ子のサッパリさといい加減さを持ち、説教臭くない人物で惹かれました。撮影機材を体じゅうに担いだ叔父に対する「弁慶か、てめぇは」は笑いました。ところどころ感動できる話もあり、お勧めできます。
2021/06/27
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