泣きの銀次 (講談社文庫 う 44-1)
泣きの銀次 (講談社文庫 う 44-1) / 感想・レビュー
じいじ
怠け者の放蕩息子・銀次が、可愛がっていた妹の惨い死に、目覚め改心します。情にもろい泣き虫銀次が、岡っ引きになって妹を殺めた下手人探索に立ち上がります。江戸情緒あふれる宇江佐真理の人情捕物帳は期待通り面白いです。活気に満ちた江戸の町、生き生きした下町市井の情景に泣いて笑って、そして感動します。途中、ヤキモキさせられた銀次の恋路も、著者は最後にきちっと収めてくれました。このシリーズの続編2巻が愉しみです。諸田玲子の解説も一読の価値ありです。
2019/10/22
ぶち
面白かった!宇江佐さんの捕り物帖といえば『髪結い伊三次シリーズ』が代表的ですが、この『泣きの銀次』もまた違った趣でたいへん素晴らしいです。岡っ引きなのに死体を見ると大泣きしてしまう銀次。死体が怖いからではない。亡くなった命が痛ましく思えて泣いてしまうのです。優しい岡っ引きです。猟奇殺人のシリアルキラーを追いつめていく過程はミステリーとしての醍醐味を充分に楽しめました。それでいて、人情話に負けないほどの人情味溢れる登場人物たち。読んでいて肩入れしたくなる人物ばかりです。続編もあるので、たいへん楽しみです。
2022/06/17
Shinji Hyodo
何と言っても宇江佐さんの江戸捕物帳。廻り髪結いの伊三次と違って銀次は小間物屋の総領息子。陰惨な事件で可愛い妹を喪い、その下手人を手前の手でしょっ引く為に総領の身代を弟に譲ってまで岡っ引に生きる覚悟がいじらしい。からりと粋でいなせな銀次だが、死体を目の当たりにすると身も世も無いほどに泣きだして手が付けられない。そこで付いたあだ名が『泣きの銀次』。登場人物も時代も町も伊三次と丸かぶりなのにそんな事はおきゃあがれ❗️とばかりに面白い。銀次のシリーズも3巻まで有るようで、こいつぁ楽しみだぜ。
2016/02/26
shizuka
大店の長男でありながら岡っ引き。どんなワルよ。と思いながら読んでいたら、全然ちがった。気っ風が良くて爽やかなチョイといい男。でも死体を目の前にすると大泣きしてしまう、そんな彼を人は泣きの銀次と呼ぶ。どうして泣くのか、その理由にも銀次の優しさが滲み出ている。大捕り物の今回、なかなかシッポを出さない犯人に銀次と一緒にイライラ。で、なんとも意外な結末。お芳が身を引くところちょっとしんみり。男って勝手に安心して、女の気持ちを置いてけぼりにしちゃう。でも銀次はあきらめなかった。お芳、いい娘だよ。大切にしてね、銀次!
2016/12/03
ふじさん
死体を見ると涙が止まらない岡っ引きの銀次シリーズの第一作。大店の若旦那の身分を捨て、最愛の妹の命を奪った下手人を追って岡っ引きになった銀次の波瀾に富んだ人生。銀次に関わる人々の市井の人生を優しいタッチで臨場感たっぷりに描いた作品、捕物の要素や男女の恋模様も入り、最後まで心を引き付ける内容。
2020/08/17
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