ふわふわ (講談社文庫 む 6-21)
ふわふわ (講談社文庫 む 6-21) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
部類の猫好き、村上春樹による猫讃歌。文体は散文詩を想わせる、なかなかに抒情的なもの。しかも、少年との年齢差と、お互いのイノセンスの質の違いの交錯がなんとも絶妙の交響をなしている。こうして見ると、猫に限らず、動物との交感とは、ひとえに同じ時間を共有することだったのだと、しみじみと思う。「猫の時間は、まるで大事な秘密をかかえたほそい銀色の魚たちのように…」といった比喩表現も、いつもよりずっと冴えているかのようだ。安西水丸の淡々、飄々とした挿絵も、こうした春樹の文章に似つかわしい。
2014/09/08
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
わたしは世界じゅうのたいていの猫が好きだけれど、この地上に生きているあらゆる種類の猫たちのなかで、ふわふわの毛並みの茶トラの雄猫がいちばん好きだ。 その猫が、おひさまの光をたっぷり吸い込んだ藁のような匂いで、横に寝転んでお腹を見せてくると、この世には何も嫌なものなんてないような気になる。使いこなせていない産まれたての肉球をふにふにして、何もひどいことはしないと信じきった瞳と目をあわせると、なんだかすごく泣きたくなってしまう。この幸せがいつまでも続けばいいと、一生一緒に生きていこうと、そう思うんだ。
2019/07/29
新地学@児童書病発動中
村上さんが子供の頃飼っていた猫のことを書いたエッセイとも小説ともいえる作品。猫好きであることが痛いほど伝わってくる内容で、私も猫が大好きなので、感情移入して読んでしまった。猫の喉を鳴らす音が高まるのを「夏の終わりの海鳴りみたいに」といった絶妙の比喩に感心した。村上さんにとって猫は自分の孤独を共有してくれる生き物だということがよく分かる作品だった。
2015/04/02
海猫
ナンセンスな内容を予想して読んだら、全然違った。なんというか日向ぼっこしてたら、とても気持ち良くなってくるような読み心地。実質、絵本なのですぐ読めてしまうけれど、良い時間を過ごした気持ちになれた。村上春樹と安西水丸コンビの作品はリラックスして読めていいですね。新作は安西さんが亡くなられたので無理になってしまったけれど、これまでの作品を折を見て読み返していきたいと思ってます。
2019/11/15
ケイ
水丸さんとだから、殊更ほのぼのとした感じに書こうと村上さんが心がけているような感じがした。文体がどこか不自然なような。実際にあったことなのだろうけれど。水丸さんのこの絵も、あんまり好きにはなれなかったな。しかし、2回勝手に旅に出た話は良かった。
2015/06/12
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