鬼流殺生祭 (講談社文庫 ぬ 2-2)
鬼流殺生祭 (講談社文庫 ぬ 2-2) / 感想・レビュー
tengen
閉ざされた家門、霧生家で起こった殺人事件。一つは屋敷内部の人間にしか起こし得ず、もう一つは外部の犯行しかあり得ない。この極似する事件の謎は解けるのか?文明開化の世を舞台に寡黙に血を守り抜こうとする一族で惨劇は繰り広げられる。
2014/05/23
Rin
明詞という時代を舞台にしたミステリ。ホームズ&ワトソンという役割を担った主人公たち。そして九条さんがちらほらと出会う、後の偉人たち。理論的に物事を捉え、思考する朱芳さん。九条さんはホームズではなかった。また、彼が事件に首を突っ込まないと朱芳さんが推理できない。それはわかるし、好奇心だけではないこともわかるけど、他者への踏み込み方が私には少し合わなかった。でも貫井さんにしては読みやすく、事件の犯人は途中で予想できたけど、事件が起きた背景の人の心の闇の鬱々とした読後感は貫井さんらしかったです。次も読みます。
2018/05/06
ももっち
貫井さんのイメージと少し違っていて、これはこれで私は楽しめた。明治ではない明詞という架空の時代のオカルトぽい雰囲気の本格ミステリー。奇妙な因習に縛られる武家屋敷で続けて起こる相反する状況の密室殺人。元公家の三男坊、九条惟親はその謎に挑む。真の探偵は、九条の友人の朱芳慶尚。病気のため顔色が悪く、変人。とんでもない博識で安楽椅子探偵。あれ?誰かにちょっと似てる?横溝・京極的な印象は否めない。でも、怨念めいた演出は其れ程でもないし、衒学的で圧倒的な蘊蓄が氾濫するものでもなく、程良い中庸さで読みやすかった。
2017/03/21
キムチ
貫井さん、肩から力を抜いているんじゃぁないか・・と思うような1冊。面白いんだけれど「どっかで読んだなぁ」感が強い。私は読んでいてずっと山風さんを思い出したし、巻末に資料本として挙げてもいる。中盤の盛り上がりからなだれ込むラストは少し雑。動機として発想の面白さは買うものの、構成が甘い感じがする。とはいうものの、分厚くても一気読みさせ、娯楽エンタテインメントとしてはなかなか。横溝さんを思わせるおどろおどろしい命名は無用だった気がするが。
2015/09/17
あも
横溝正史+京極夏彦といった感じで古き良きミステリの趣を存分に湛えた作品。時は"明詞"7年。有閑貴族の九条はとある惨殺事件に巻き込まれ、友人・朱芳に相談しつつ真相を究明す(この2人もろ京極堂と関口を彷彿)。些細な言葉遣いも絶妙で、新時代の到来に浮きつつも古い因習の消えやらない明治初期の世相を存分に活写している。幼き夏目漱石の登場など時代背景を感じる小ネタも充実。そしておどろおどろしくも切ない真相と幕引き。目先を変えるためなどではなくこの物語の舞台にはこの時代が必要だった。それにしても貫井さんの器用さ凄いな。
2016/11/30
感想・レビューをもっと見る